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季節
しかし、若菜はタブレットを香月の前に出して、
「今から優君と、交信します。幾つかの質問をして見て下さい。相当な既に知識量に驚かれると思います」
「は・・い?」
天才児の思考は、及ばない・・香月はタブレットを眺めた。幼い5歳の少年三木優が画面に現れた。
「おお・・」
香月の眼から、大粒の涙が毀れた瞬間だった。その面影は、故沢木 純の再来かと思われるような笑顔に満ちていた。沢木 純は、この幼い純真無垢な笑顔の方であった。
「おじいちゃん・・どうしたの?泣いてるの?」
三木 優が言うと、香月は涙をぬぐって、
「ああ・・御免ね、優君。おじいちゃんは、優君のおじいちゃんと仲良くさせて貰ってたから、優君の笑顔を見て、思い出したんだよ。私は香月と言います」
「うん!知ってる。S工大名誉学長であり、鳩博士として、数々の論文を発表してる偉いじいちゃんだよね」
「うん・うん」




