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変化
「わしは聞かんでも良い事をあんたから・・」
「いいえ、そうではありません。現社長が持つ株券を担保にし、30億円を用意致します。それで、貴方のご子息夫妻は解放されます」
「何!」
佐伯が驚いた。
「これは、会長のご意思です。器を与えれば、孫である君成君も経営者として育つだろうと思われていましたが、とうとうある決断を下されました」
「何故わしにそんな重大なことを?」
「佐伯さん、雄一郎会長の遺言があります」
「何!雄一郎の遺言だって?」
「はい、私も黙って去るつもりでしたが、会長はもう重い病気の為、3ヶ月の余命を宣告されて居られる身、貴方と共に歩まれて来たこれまでの経緯を深く憂慮され、命ある間に、その憂いを無くされるよう、重大な決意を持ち、黒田常務に託され、また私に株券を託されました。来月の役員会で、君成社長解任動議が出されます。既に私を含め、過半数の者が黒田常務につきました」
「何と・・おお・・しかし、わしは雄一郎に会わねばならん」
しかし、木下は大きくかぶりを振った。




