目標
手を取り、声を上げて二人は泣いた。才能があり過ぎるが故に、その才能に自分が負けて、死さえ選ぼうとする。貝になろうとする。未優自身が超えられぬ父と言う存在があった故に、自分を保つ事が出来た。環もそうである。若菜も、きっとそうだろう。しかし、その根底には、善性が必要なのだ。若菜は持っていた。そして、この突如の提案は、実は香月から出ている事も、この時の若菜には知らされて無かったのである。
「えっ!若菜ちゃんをオックスフォード大学へ、修士課程、博士課程の取得に向けて沢木グループが派遣するって言うの?」
美弥が、びっくりして口を押さえた。この急激な展開はどうなのだ。若菜から、この時初めて告げられた内容にも、美弥は再び驚くのであった。
「若菜ちゃんは、もう経営学をマスターしているって言うの?2年生になったばかりなのに?」
「はい、高校の時に、終わってました」
「貴女・・天才少女だったのね・・じゃあ、才能を今まで隠してたって訳・・びっくりした」
「未優さんに見抜かれて・・香月博士にも見抜かれました。私は、共感する妻鳥オーナーのプロジェクトに、全霊でご協力したいと思います」




