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目標
未優と若菜が、初めて一対一で向かい合ったのは、もう汗が滴り落ちるような暑い午後であった。天気予報では、フィリピン付近で発生した台風が、進路を四国沖から、明後日には神奈川に上陸するかも知れないコースをとっていたが、台風の影響であろうか、このうだるような暑さに、
「今日は暑いね、若菜ちゃん」
「はい、北海道育ちの私には、とても暑く感じる日です」
「分かるよ・・大変じゃね、鳩舎の管理も」
「あ・・いえ。好きでやってますから」
「単刀直入に聞くね、若菜ちゃん」
「はい?何でしょうか?」
未優がこの時じっと若菜の眼を見つめた。未優の才能を誰よりも知る若菜。その相貌の奥には、何の隠し事も出来ないものがある。
「何時からなんかなあ、若菜ちゃんが自分の能力を隠そうとしたのは・・」
「え・・あの・・」




