332/399
目標
若菜に振られて、えっと言う顔で彼女は香月を見つめた。祖父と同様優しい眼であった。
「あの・・美弥姉さん、御免ね。言っても良い?」
「何を遠慮しているの、若菜ちゃんがずっと思っていた事なら喜んで聞くわ。だって、貴女は鳩の心が読めるのよね」
「え・・」
若菜が驚いた。
「知ってたわ・・私には絶対無い感覚・・それは、貴女が鳩に限らず人の心も読めると言う事よね?違う?貴女の苦悩と、心のトラウマはそこにあった。けど、それを決して表に出さない程、強い理性があるから、苦しんで来たのよね。今の貴女だから私も言えたの」
「美弥姉さん・・」
若菜の両眼から涙が毀れた。そして・・
「透き通ってるの・・動物の心って・・それに対して、人は実に醜い・・」
香月が何か言おうとしたが、若菜は続けた。




