目標
「あの方が・香月博士だったとは・・」
手で口を押さえている。別室の静かな部屋は、空調も自然で心地よい温度であった。若菜が少し伸ばし始めた髪を掻き上げながら、望まれていた北竜号を香月の前に・・望まれてはいないが、美弥も小谷系の一羽をバスケットに入れていた。とりも川滝櫂竜号をバスケットに入れている。
香月は、バスケットの外から、先に美弥の鳩を眺めた。
「ふふ・・*小谷系の現役レーサーですか・・これは懐かしいなあ」
美弥も口を押さえた。驚異的な鑑定眼とお聞きしているが、一瞬で見抜くその才能には、驚くより他に無い。
「では・・美弥さんの鳩から・・何をお聞きされたいのでしょうか?例えば、この鳩を今度稚内GNに参加させると言う事ですか?或いは、このスピード鳩の主流群の血統を500キロダービーに特定して参加させようと、迷ってらっしゃるのですか?」
「あの・・小谷の伯父は、確かに*小谷スピード系として当時活躍しました。しかし、本来は長距離系としても活躍した時代があります。この鳩は、筋肉も凄く柔らかく、副翼も広い正に長距離鳩の資質を備えております。しかし、根室で使翔していた鳩ですから、こちらで馴致をするのは難しいので、種鳩としての資質をお聞きしようと思っていました」
*白い雲 隻眼の竜




