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変化
「何だと?これだけわし等が国会議員、役場、色んな所に手を回してどうにもならん事を、一介の従業員が大きな事抜かすな!」
確かに、言葉上で大きな事を言った。更に怒りの上塗りを買ってしまった須崎は、ぺこりと頭を下げて、うなだれながら一万円札を机に置き、店を出た。
はっきり言って、彼に何が出来ようか。その場で調子こいて感情だけでものを言うな・・今村、円西も口を開けたまま黙った。
菊野女将が、須崎の後を追うように走り出て来た。
「待って!待ってすーちゃん。ここ!ここ連絡して!」
女将から渡されたのは、女将の恐らく自体の家の電話番号だろう、一礼して須崎は寮に足どり重く向かった。
その晩・・木下が疲れた顔で寮に戻って来た。待っていたように、須崎は・・彼の部屋に入った。
「そうか・・第ニ福竜丸の漁師たちが入り浸って居る「菊野」に君は知らずに行ったのか」
「俺・・正直、腹立ったですよ。木下さん、どうしてそこまで会社に忠義を示すんです?そこまでする必要があったんですか?馬鹿社長の為に・・」




