目標
「貴女の笑顔は、凄く良いですね。迷いの霧をふっ切られたようなお顔をされている」
「え・・?」
この老紳士は、更に
「管理は大事な事です。しかし、30に余る種鳩鳩舎の飼料一つ一つとっても全て変えている。どなたにでもこれは出来る事ではありません。貴女から非常に大きな競翔鳩に対する愛情や、熱意が感じられます。特にこの川滝系は、普通よりふんだんに青菜が与えられている。そして強靭な体躯を維持する為に、貝殻等自分で配合した鉱物飼料を存分に与えられています。これは貴女が考えられた事ですか?」
「色んな血統に管理者の飼育ノート、メモがありました。それを一つずつ纏めて行き、自分なりに出来る事、出来ない事も含めて、その血統群の特徴を分析しました。それにより、一鳩舎、本当は一人の管理がベストなのでしょうが、5人で分担して作業を行っています」
「素晴らしい・・貴女以上にここの鳩舎管理が出来る方は、そうそう居られないでしょうね。選手鳩も非常に健康的だ。これは管理の成果です。帰還率も非常に近年上がって来たと聞きますが」
「出来るだけ、鳩を見るようにしています。選手鳩も5000羽近くになると、大変ですが、ここも10ブロックに区切ってますので、担当を分けて管理出来るようになりました。オーナーが私費を投じて、改善して下さいましたから」
うんうんと頷きながら、老紳士は、ここを後にした。




