成長
「おお・・若菜ちゃんは、そこまでこの鳩を見切ってくれたんじゃの?有難う!有難う!わしはな、先人達が血と汗と無数の涙を流して築き上げて来た至宝の血統を、現代に埋没させとう無いんじゃ。この鳩は、尤もわしの知る限りにおいて、川滝系源流の血を色濃く継ぎ、もし、わしにも、偉大な英傑鳩達に並ぶような、そんな鳩が授かっているんでは無いかと、自問自答しとった。わしの現在の状況では、競翔は無理・・きんど、子孫だけでもここで次代に継がせられないかと思うて、ここへ連れて来た」
「・・この鳩は、大空を滑空するべき鳩だと感じました。むしろ、才能は、うみより大きいかも知れません。オーナー・・一緒に連れて来られた、この兄弟鳩の方が、種鳩に向くような気が致しますが・・」
若菜の競翔家の天分を強く感じたとりは、一人の愛鳩家として若菜の手を握った。若菜には大きくてたくましくて、人間味たっぷり溢れるこのオーナーのもとで改めて仕事をしたいと思った。この時彼女は同時に自分の方向性を見出したのである。
北竜号(愛称 うみ・・ほくりゅうごう) もう一羽の川滝系の秘蔵鳩が世に出ようとしていた・・その名は、後の(川滝大座礼2世号)・・どんな時代にも、英傑は存在する。しかし、それを見出すのは、競翔家しか居ないのである。その見る眼が必要なのである。根本は、愛情の他に無い・・




