成長
「あの・・どうして?」
「今の競翔界は、もう崩壊寸前まで会員数の激減があり、早熟の輸入系に押されて、長い間培ってきた至宝の血統が軽視されたり、競翔の方向性の違いだけ論じて、競翔家自体の飼育レベルが低うなっとるとわしは言い切る・・」
「そう言う方ばかりじゃ無いと思いますが・・まだ競翔鳩を愛する方は沢山います」
反論する若菜。そう言う言葉は、鳩を愛する彼女には聞きたくない言葉だった。
「無論、そうじゃ。きんどな?若菜ちゃん、帰舎を自動記録するような方向性になった現在、鳩と競翔家の立場は、遠いものになって行く。ほなな気がするんじゃ、わしには。ほんで、わしのような非力な人間には、大きな志を持って、競翔界の改編、構築に動いて来た先人達の思いを伝承して行く方向さえ見えんのじゃ」
その言葉に、若菜は、とりの持つ大きな競翔鳩に対する愛情と共鳴をした。彼女は言った。
「この子・・もっともっと飛びたいと思ってます。けど、この子にとっての大空は、必ずしもこの子に適応した所では無いように思ったんです。うみと一緒・・」
「・・この鳩はな、*川滝系源流である、*大座礼号系統の血筋、写真でしか見えんきんど、その鳩の再来かとわし自身は思うとるよ。きんどな、わしが忙しい上に、今まで競翔させとった方が亡くなり、わしのもとに戻り、今日ここへ連れて来た」
*閃きの中で




