成長
「そして、ここへ来とる来賓者も、あんたも同じ入場者、作品を見てくれる者は誰も同等じゃきん、ゆっくり見てつかと、優しい笑顔で言ってくれたんです。俺、感激したっすよ。本当・・そして、沢木グループの事を知って、山下さんの作品を見て、凄い体が震えるような感激を覚えて、泣いたんです。そしたら、そこへオーナーが来られていて」
「ふふふ・・」
美弥は楽しそうに笑った。屈託のない自然な振る舞いの正直な青年・・これは、持って生まれたものだろう。そして、神部の眼は、ありきたりの詰め込まれた視点では無く、真っ白なもの・・そう感じた。
「オーナーが、君・・何泣きよんぞ?ヤマチューの作品に感激したんか?」
「はい・・さっき、こんな風貌で展覧会に来た自分を、同等の一人の来場者と同様に扱ってくれて・・そして単車の話もさせて貰いました。俺・・少年院にも入りかけた暴走族やってますが、山下さんもその話をしてくれて・・そして、この作品ひとつひとつ眺めていたら、涙が出ました」
「ほほ・・わしも君の話聞いて見よ・・おい!ヤマチュー、こっちへ来てくれんか?」
来賓者の大勢居る中で、山下さんを呼び捨てにし、こっちに来いとは、この大柄な人物にも感じるものがあるが、横柄な人物ではあるまいか・・・逆に神部はとりに対してむっとした感情も湧いたのだった。
そしたら・・




