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若菜の海  作者: 白木
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成長

「俺の事先に言いますが、沢木グループに拾われたのは、山下さんのお陰なんですよね」

「山下さんて言うと、『中ヤ』で有名なあの芸術家の?」

「はい・・東京で行われた個展で、凄い感激しました。俺って鑑別所も入った事があります。不良でした。その時の俺は、関東最大の暴走族「爆雷」のリーダーで、何気なく、立ち寄った個展だったんです。」

「ふふ・・沢木グループには、個性豊かな人材が揃っているし、経歴等無関係と言う風潮もあるとは聞いているわ。だって、私だってイレギュラー採用ですもの。単に少しばかりの縁があったと言う事だけ」

「そうなんです。俺もそれっすよ」


 神部が言うと、えっ?と美弥は神部の顔を見た。


「俺ね、会場にど派手な単車で乗り付け、入場を女性スタッフに制止されてたんです。そしたらね、山下さんが、『どなんした?』って奥から出て来られたんです。俺の風貌が、この展示会にふさわしく無いと言う女性スタッフの言葉に、山下さんは笑ったんです。『兄ちゃん、えらい単車いじっとるのう、馬力は200馬力位か?ピストンリングは?集合マフラーはどこのや?・』って言われて凄い自分の単車を良く知っとられて・・答えると、『ええやないか、この単車は』はい!って俺が言うと、『まあ、中に入って見てつか、この展示会は、誰でも入って貰う所やきんな、人見て制限やかせんきんの』その言葉でいっぺんに山下さんを好きになりましたよ。他のマスコミやら、高名な陶芸家、芸術家、色んな人が来ている中で、俺とテーブルで向かい合って、単車の話をしてくれたんです。そしたら、愛媛県下で鳴り響いた、自分も夜叉王という暴走族の初代総長だったと言う話を、大きな声でその場でするんですよ」

「まあ・・ふふふ」

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