成長
合同鳩舎の中で、特に若菜が眼をつけていた鳩が居る・・その鳩が三年前突然死去した、*芳川浩二作使翔していた、香月神威号系統の、美しい栗ゴマのメス鳩だった。その若菜がお気に入りである鳩の事を美弥も知っていて、それは非常に魅力的で素晴らしい鳩だった。
「あのね、美弥姉さん・・この合同鳩舎では、1000キロレースが終った時点で、委託されている鳩の15分の1しか残らないけど、最長何年まで委託を受けるの?」
「さあ・・その事は聞いてないけど、現代の競翔スタイルでは、1歳、2歳でもう稚内GNレースに参加させるって言うのが主流の考え方よね。どうしても早熟の系統で、体力のある若鳩を使翔する・・それが正しい方向なのかどうかは分からないけど、ずっと育てて、5年、7年競翔に参加させると言うのは、余り近年では一般的では無くなってる見たい」
「この神威号系統の芳川浩二鳩舎って、香月博士が委託していた、香月系よね」
「ええ・・そうよ。三年前突然亡くなって、この合同鳩舎の飼育血統の中で数羽の鳩達を委託されているわ。この仲介をしたのが、沢木グループ現オーナーの妻鳥道夫氏だそうよ」
「私・・オーナーに色んなお話を聞いて見たい」
「うーーーん・・難しいわね。超お忙しい方だから・・」
「でしょうね・・」
そんな機会がすぐに訪れる訳では無く、漫然としながらも着々とイベントの準備は進んで行った。
*白い雲 隻眼の竜




