接点
我が子を手放さざるを得なかった事情もあるだろう。しかし、一方では理恵も常に産みの親が近くに居ては、様々な複雑な思いも重なり、育ての母としての自分、女性としての自分・・色んな葛藤の中で生きて来た。若菜はそんな周囲の気持ちの中でずっと自分を封印して生きて来たのだ。やっと若菜と言う少女が、本当の意味で分かりかけて来た美弥だった。
美弥は意を決した。理恵と、菊野の二人を会わす事だった。何故か彼女はそう思った。お節介だと叱られ、また二人に恨まれるかも知れない。これまでの人間関係を壊してしまうかも知れない。しかし、彼女は行動に移すのだった。未優は、それ以上はこの若菜に対して入り込もうとはしなかった。
「え?何言ってるの、美弥さん、貴女・・」
眉間に皺を寄せ、菊野は美弥に不快な表情を浮かべた。
「分かっています。けど、これは必要な事だと私は思うんです」
「何で?」
「菊野さんにはお分かりだと思うんです。私もお節介の度が過ぎている事も承知です。でも、若菜ちゃんにとっての母親とは一人なんです。そうじゃなくてはならないんです」
沈黙が続いた。美弥が何を言いたいのか、少し菊野に理解出来たようだった。
菊野の両頬から次第に落ちる涙・・押し殺したような嗚咽・・美弥も同じく泣いた。




