接点
愛清会、磯川総合病院の神経内科で、若菜の治療が始まった。睡眠療法を行う事に決定したのは、未優の勧めでもあるが、何が幼い頃の若菜の心に強い衝撃を与えているのか、それをまず突き止めない限り、又全くこれまで治療を行って来なかった事もあり、快癒には近く無かった。大学で再びバスケットボールをやるには、時間がどの位掛かるのだろうか・・。
佐伯氏が心配になり、上京して来た。美弥が案内をする。そこで、昼食を取りながら雑談をする事になった。ようやく皐月の花が終わり、初夏のような風が吹く日であった。
「そうか・・若菜の口数の少なかった幼少時に何か、強い精神的ショックがあったと言うんだな?身体的ショックより、精神的ショックが今回の爆破事件で誘発されたのでは無いかと・・」
「はい・・そう言う事では無いかと、治療を開始したようです」
「済まないね・・美弥さんには、色々忙しい身であるだろうし・・」
「いいえ、私にとっても若菜ちゃんは、妹同然の子ですから」
「有り難う・・しかし、何でだろう・・理恵が辛くあたった時期はあったけど、それは若菜に暴力を振るったとかそう言う事では無いんだが・・」
「ええ・・分かっています。理恵さんは、心の優しい方です。ただ、産みの親、育ての親たる自分の立つ位置が分からなくなっていた時期があるようです」
「うん・・」




