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接点
しかし、祖父の佐伯が余程の事があれば、間違いなく口を出した筈だ。理恵が肉体的に、若菜に対してひどい虐待をしていたようには未優も思ってはいない。ただ、精神的に彼女を追い詰めたのは事実であろうが・・
「そうですか・・理恵さん、今の貴女と若菜ちゃんの関係を見ていても、全く違和感がありませんが、何か気づかれる事はありませんか?」
「あの・・」
理恵が、必要以上に立ち入ろうとする矢継ぎ早の未優の質問に、少し違和感を持った。未優は全く動じる事は無い。父沢木と違うのは表情豊かに、色んな会話を交えながらその者の本質を見出そうとする沢木 純とは違い、能面の表情の中にもやはり心に宿しているのは、優しい心なのだが、それを理恵には見せないのが未優であった。
「何か?感じる事が?」
「あ・いえ・・」
理恵は、それ以上は口を噤んだ。確かに言葉上若菜には、きつくあたって来た。そして、厳寒の海にも、夫秀一と漁にも出ていた。




