変化
「したから・・俺には、もしそれが北海道支社からこの根室営業所にも通達して来るんなら、悪意にしか思えないんだ。それも紙切れ一枚で、木下所長は支社の会議にも呼ばれて居ないのにさあ・・須崎副所長・・何か、所長に恨まれる事でも?」
「いや・いやいや。全く身に覚えも無いし、けど、俺は勤め人である以上ノルマがあるのが当然だと思ってるし、仕事だと思ってるから・・そのままこの前の会議でも言ったまでだよ」
進藤が首を又振る。
「今までの本社の営業なら、それはあるかも知れない。でもここは掃き溜め・・根室営業所の人間は皆思ってるんだあ。だから、ノルマが達成出来なくても、何等今と変わりないと思うんだ・・これまで通りと言うのが自分達の一致した意見。つまり所長は、須崎さんに現実を身を持って知ろ、と言う意味で言ったんでは?」
複雑な表情をしながら須崎は、再び営業所に戻った。渉外係の甲斐も紀伊も、今まで通りの自分の職務をするだけで、一切営業活動をする様子も無かった。ただ・・この本社からの通達は、単なる儀礼だとは須崎は思って居なかった。山岡は自分の担当エリアに顔を出すだけで、一切新規開拓等頭に無い様子。こんな感じの営業所の空気で、赴任早々の須崎に、何か打開策など見えそうも無かった。寮にそのまま帰るのも憂鬱で、須崎は町外れにある一軒の小料理屋に立ち寄った。




