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第2部 勃発
「何だね?」
少し不機嫌そうに、話の途中なのにと、黒田は屋鍋に言った。この役員会には、須崎の友人安藤も外商部担当重役に昇格していて出席していたが、黒田の突然の発言に、いよいよ露骨な須崎外しが来たなと思っている。そんな情報は、とっくに役員達は知っており、役員会で須崎が拒否すれば、解任動議が出される事も分かっている。屋鍋が何故その話の途中で手を挙げたのか、その真意は分からないのだ。
「本日の役員会ですが、人数が揃っておりませんよね。役員人事などに関わる重要な案件でしたら、取締役前原君成開発部部長や、他の役員も呼ぶべきだと存じますが・・」
「な・・に?」
黒田の顔が険しくなった。役員会は、24名。常務を異動させようとする役員会ならば、当然の役員会全員が揃った場で無くてはならない。今日の会議は18名しか出席していないのである。中間派、須崎に近い者は安藤だけしかこの場には居ないのだから。つまり、動議の話も屋鍋は事前に聞いているが、それだと、ここで須崎に蹴られても、正式な役員会では無いからと言う言い訳になる。




