第2部 勃発
これ以上、自分の地位すら脅かされる存在になった須崎の突出を望まぬ黒田社長は、今度は須崎外しの姑息な手段に、この時打って出る。
北海道支社担当常務役員を下ろし、九州支社担当常務として役員会で提案をしたのである。
この時、専務取締役は、黒田直近の新川、営業本部長役員に、屋鍋。総務部長兼常務取締役栗源と、役員の大半以上を黒田派閥として取り込んでいた。
「どうだろう?須崎君、九州支社を立て直してくれないかな?」
屋鍋の頬がぴくっとなった。いよいよ露骨な形で、須崎外しを黒田は実行しようとしている。この時屋鍋自身は、表面上は黒田の子飼いとしていたが、彼は実際心の中では、黒田はもう終っていると思っていた。又、何か分からぬが、須崎は創業家とは、特別な繋がりのある事も薄々感じていたし、君成は、枝会社ではあるが、以前とは全く違う才能で、加工部門ではその抜きんでた才能を開花させていた。又、人望もこの所出来つつあり、郁子夫人のバックアップもあって、かなりの発言権も復活している。現在では、冷静に彼は情勢を分析出来る能力に長けて来たのである。
「あの、私から質問で御座いますが・・」
屋鍋が、須崎が答える前に手を挙げたので、少し驚いた表情で黒田は屋鍋を見詰める。




