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若菜の海  作者: 白木
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氷解

「若菜ちゃん、バスケ楽しいかい?」


 久し振りに若菜と会い、話しかける須崎だった。二人が何となく初対面から話が出来たのは、血の繋がりだったのかも知れない。


「うん!」


 以前とは全く違う明るい声で、若菜は答えた。

 須崎は、途端に笑顔になり、


「そうか!楽しいのか、良かったね」

 

 北竜号はこの春で引退し、種鳩に・・若菜の一番大事な鳩・・そして両親が厳しい自然の中で荒波の中向かった海・・その両親と繋ぐ唯一の繋がりを、北竜号は担ってくれた。理恵の心にあった、自分が与えてやる事が出来なかった母乳・・しかし、乳を欲しがる赤ん坊を彼女の手は自然と包み込み、育てて来た・・人の心は複雑怪奇・・しかし、底流には人としての慈しみ、女性である自己の母性・・そんな感情を抑えていては、心が歪む。淀んだ心からは本来人が持ち得る、気遣う、分け合う、助け合う感情が自分の事にしか向かなくなってしまう。美弥の存在が、佐伯家を救った。同時に、須崎と言う大きな男が、必然であるように、育ち始めて来たのであった。

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