氷解
菊野の表情を見ながら、聞くべき事じゃ無かったのかも知れないと、美弥は思った。重い言葉が菊野から聞かされようとしているのだった。
「前妻は、その長男を連れて夫の浮気が許せず、家を出た。その事を雄一郎会長は深く反省していてね。でも、その前妻は交通事故で亡くなったの。雄一郎は、その子の為に出来る限りのバックアップをしたわ」
「え・・じゃあ・・じゃあ、須崎さんって・・」
菊野は頷いた。
「そうよ、その長男の子。長男も、須崎さんが中学三年の時に重い病気で亡くなったの」
美弥は口を押さえた。
「恵一さんの大学での親友だった、佐久間米司会長に、須崎さんの就職を頼んだのも雄一郎会長。でも、須崎さんは、これは、本人も全く知らない事だけど、日本大学の歴代の就職口の中から、自然に㈱RECを選んだのよ。もはやここには、HZK㈱は関係の無い話なんだけど、恵一さんはやはり何の因果かしら・・最も働き盛りの時に、やはり重篤な病で亡くなった。孫である君成社長は、頭は良いけど、経営者としては、駄目だなって思っても居たし、彼には出来る限りのバックアップもして来たんだけど、仕方無く子飼いの黒田社長を使うしか無かったの」




