現場
ぴしゃっと、須崎は話を切った。有無を言わさぬ、黙って聞いておれと言う、彼自身がこの所身につけて来たカリスマ性の演出だった。屋鍋は会釈すると、説明を始めた。
「部門を細分化する理由があります。畜産部門はこれまでの委託農園形式もありますが、市場開放の意味もあり、㈱REC独自の農場を持ちます。持ちますと言いますが、完全子会社化した農場を買い取ると言う話です。出資金はしかし発生しません」
ざわざわとなる会議。面食らったように栗源が、メモしている。
「その理由を別紙に示しております。名乗りを挙げた農園が5農園あります。ここにイベリコ豚の養豚場を委託します」
屋鍋の説明は続く。そして、それは表には表れていないものの、前原君成の発案した、数々の食肉加工レシピが、既にこの時生まれていたのである。彼は、こう言う分野に才能を持っていたのであった。その才能を見出したのは須崎だ。正確には、須崎美弥であった。
計画書は、これまで考えもしなかった新分野に及ぶにつれ、営業部の不安が大きくなった。そこでやっと質問が始ったのである。この会議は実に8時間にも及ぶ、長時間のものとなった。




