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現場
「はあ・・」
「まあ・・良い。機能しているうちは、私は君の好きにさせてやる・・やるが、須崎君、俺の目の黒いうちは、創業家とは必要以上の接触はするなよ。特に郁子夫人は、何を仕掛けて来るか分からんシャープで、戦略を持っている女性だ。隠然とした、まだ影響力も、資金力もある。息子は経営者としては駄目の烙印は押されているが、会長派として私もこうやって社長に持ち上げられ、今がある。創業家とはこれ以上もめたくないのも正直な所だしな・。とにかくだ・・この案件に対する失敗は許されないよ、分かっているね」
「はい・・」
黒田の眼が異様に光ったのを見て、やはり須崎はこの人物に心を預ける気持ちは失せていた。しかも、自責任下でやれと言うGOのサインと同時に、黒田の奥底にある冷たいものを感じて、身震いするのであった。
翌日北海道支社内で、主だった幹部会が開かれた。栗源も参加している。黒田の姿は無い。彼に逐一の報告をさせるからである。
少し隣の屋鍋が、須崎に耳打ちした。
「栗源・・要注意ですよ」




