175/399
改革
須崎はその足で、北海道支社に向かった。殆ど屋鍋はこの時期には北海道支社を掌握していて、㈱RECは次々と拡大路線に進んでいた。
久し振りに、支社長室で屋鍋と向かい合った。以前のような彼から感じるようなぎすぎす感は無い。器を与えられたら、屋鍋はやはり能力のある男であった。
報告書に眼を通しながら、須崎はふいに、こう切り出した。
「屋鍋次長(本社での役職)、畜産関係の件ですが、ソーセージ工場を増設したいんですが」
途端にぴくっとなる屋鍋の顔だった。
「それは唐突ですね、本社の了解を取られてますか?」
「いや・・どの程度の投資が必要かと思って」
「それは・・つまり供給できる量が確保出来ると言う事ですね?どの程度の量ですか?」
「まだ・・分からないけど、年間5000頭分程度・・」
「成る程・・そう大きくない数字ですね。試算して見ましょうか?豚肉ですか?」
「豚肉です」
屋鍋の顔が、少し緩んだ。




