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競翔
美弥は嬉しそうに頷いた。夫は、全てに真っ直ぐだ。正直そのものの男で、優しい心を持っている。彼が企業戦士に徹しきれない厳しさが必要な時には、美弥は自ら裏方に徹しきっても守る・・彼女はそう決心していた。既に、美弥は、前原郁子、菊野玲子、佐伯理恵と、強力な夫人達と深いパイプを結び、様々な方面に動いていた。それは、須崎の知らない部分で良いと、彼女は思っているからだ。
「わあ、美弥お姉さん、初参加優勝って凄い」
若菜が言った。美弥の使翔するのは、叔父が飼育している、関東四天王小谷系の血筋である。それは圧倒的に短距離でスピードバードらしい強さを発揮する。
「こりゃ、新人さんとは言えねえなあ、ははは」
佐伯氏は、流石に小谷系を使翔する美弥の鳩舎の鳩群に、凄いを連発していた。
「ははっ!美弥の所に行った鳩が、初参加優勝したか」
もうかなりの老人である、東神原連合会の相談役に退いている*小谷は、電話の先で嬉しそうに言った。
*白い雲 隻眼の竜




