奇策
「そうか・・北竜号の血統かね・・待ってくれよ」
若菜が、学校に行っている時間であった。彼女も最近は殆ど休む事なく通っているそうだ。前より明るくなっているのだと、その影響が美弥にある事も、佐伯氏は喜んでいた。
佐伯氏が持って来た血統書を、見詰める美弥・・意外な血脈が明らかになった。
「へえ・・北竜号のルーツって、日本から古く使翔されている南部、今西系なんですか」
「ああ、日本の気候風土、特にこの北海道と言う過酷な条件の土地で長年飼育され改良されて来た血統だからね」
「良く分かりました。前に読んだ本に、香月博士の紫竜号と言う怪物鳩の実話がありましたが、「竜」って名前は平和を象徴する鳩にしては、勇壮ですよね」
「ああ・・つまりだね・・放鳩する際に、鳩は帯のような大きな集団を作り大空をうねるように飛ぶんだよ。その帯は竜雲に似て、その先頭を飛ぶ鳩が、英傑・・つまりだね、竜の名を冠するように言われて来た。でもね、歴代の竜の字を冠する鳩って言うのは、それはみんな凄い記録を持っている。たかが400キロレースの優入賞位の成績で、北竜号って名前は大きいんだがね」
「でも・・若菜ちゃんは、うみって呼んでますよね?」
「ああ・・」
「訳を聞いても良いですか?何で?」




