変化
須崎
「でも、そんなもの、一個人の感情でもの言っても仕方が無い。出来ない、何もしなくて良いんだなんて誰が決めるんだ?企業人である以上、上から指示された事は、これは業務命令なんだからね」
須崎は少しむっとした表情で答えた。二人は黙ったが、これで木下の下であたらず触らず平々凡々と過ごして来た営業所の空気は、少し険悪に変化した。須藤は敵を作ろうと言ったのではない。企業人として当然の正論を吐いたのである。しかし、この10年間、現状維持で何のノルマも課せられなかったREC食品㈱北海道支社 根室営業所は、突然のFAX1枚の通達によって、一変するのである。何かが本社の中で動いている。それは、決して姥捨て山として放置されてきた流れの中でも、更に陰湿な動きもあるように思えた。
木下が、何で今年になって急にこんなノルマを・・?不思議だなあと連発をしているが、全く自分には関係無いと職務放棄宣言して来た彼に、もはや誰一人相談する者も居なく、孤立する。そして否応無しに、赴任してきたばかりの須崎に全責任が負わされる事になって行く。今までの勤務を続けて来た無気力な彼らにとって、意識の切り替えなど望めそうになかった。しかし、逆に須崎はそこにやり甲斐を感じるのであった。
当然ながら、この地では、歴然たる実力者、佐伯に挨拶に行くのは当然の事。進藤を伴って、須崎は改めて根室漁業組合の佐伯を訪問した。しかし、その日は会えず、改めて伺いますと二人の名刺を組合員に渡して帰社。




