156/399
奇策
「陣頭指揮・・?私に?一体何を・・?」
「色々伺っております。最近は北海道大学等へも足を運び、色々な商品の発案やら、企画商品があるとお伺いします」
「いや・・はは、何を言われます。これは、私の趣味的なものもありますので・・」
君成は笑った。しかし、どこか顔に余裕がある。須崎は、既に郁子夫人の情報を美弥から聞いている。どちらかといえば、前専務と同じく、君成は学者肌の人物。人を扱うのは長けていないが、研究畑の人物だ・・須崎は、この時既に君成の事をそう見ていた。
「ご協力頂けませんか?」
少し困惑した君成の顔だった。
「どう言う事か分からないけど・・自分は須崎君と二人きりなら、話したい事があります」
屋鍋が、露骨に嫌な顔をしたが、須崎は屋鍋を退出させた。それは当然感情的なものがあるだろう。日和見主義で一端は裏切り、又くっつき、今は完全に見下したような屋鍋の態度。流石に屋鍋の居る所では、君成も本音を出せまい。須崎と君成の関係は、郁子と美弥の関係が深まるにつれ、以前の立場とは全く変わりつつあった。




