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奇策
「何を言われますか、親会社である㈱RECの支社長さんに頭を下げて貰う訳には行きませんよ。どうぞ何なりとご用命下さい」
おっと・・言う顔で屋鍋は、君成を見た。物腰が全く違うのだ。以前の彼と。
「それでは、単刀直入に申しましょう。山野乳業㈱が囲い込みや傘下農園と次々契約を交わしているのはご存知ですよね」
「はい」
「㈱RECとしても、既に幾つかの契約農園を失いました。条件もそう変わらないですが、やはり大手食品会社と契約する安心感もあるのだと思います」
「そうでしょうね・・元々山野乳業㈱の北海道は天下でした。そこへ割り込んで行ったのが㈱RECですから・・」
君成が頷くと、
「実は、君成社長、REC食産㈱の陣頭指揮を取って貰えないかと思ってるんですが・・」
屋鍋がびっくりして須崎の顔を見上げた。既に子会社に追いやった男に陣頭指揮だと?いや・・そうか、これで完全に君成を切り捨てようと言う策か・・屋鍋は逆に思った。




