信頼
「今回の水産会社の出資している創業家の株は、REC食品㈱が買取ります。水産部と加工部門をニ分割する事によって、佐伯海産㈱を今後REC水産㈱として、完全子会社とします。よって、創業家のもはや影響力等は皆無ですし、加工食品会社は北海道に限らず、関東中心に今後主眼をそちらに持って行ったら良いと言う企画書もあります。持ち帰り、黒田社長にお見せ下さい。そちらは、長年貿易や加工品について、辣腕を振るって来た安藤根室営業所長を推挙してあります」
屋鍋が、何時の間にこの須崎は権謀術数の使える男になったのかと、内心身震いした。これは迂闊にこの男の牙城を今攻めては駄目だと屋鍋は思ったのだ。
栗源は本社に戻って行った。
既に今度は水面下で更なる戦いの序章が繰り広げられようとしていた。須崎には、しかし私心は全く無かった。全ては自然体・・何故須崎が黒田によって指名されたのかも含めて、色々な事が明らかになって行く。
そして、雄一郎死去の報が入った。須崎達は急遽東京本社に。佐伯も弔問に・・又動いて行く。創業主の雄一郎は立派な人物だった。君成も流石に沈痛な表情をして葬儀に並んでいた。喪主として、君成が。郁子が殆どを仕切った。黒田社長以下㈱RECの重役が並ぶが、君成は一度も彼らと会話する事無く、佐伯は震える口で、雄一郎の棺で大粒の涙を零した。




