信頼
屋鍋の顔がぴくっとなった。その話を潰したのは、須崎本人では無いか。もっと言えば、常務の木下だ。その腹心的な須崎が知っての事、今更自分も関与していると位置づけて欲しく無かった。今では、前原創業家に対し、下克上を叩きつけている屋鍋にとっては、何でだと思っている。
「つまり、社長の意向に沿っての決裁だと言われる訳ですね?」
「無論です。その為に、北海道支社は私に任されております」
言い切った須崎に、両名が意外な顔をした。須崎には、この時点で強力な女性軍師二名がついていたのだ。美弥が会社がどう出るかも予想しながら、既に郁子と連絡を取り合っている。この話は、㈱RECにとって悪い話では勿論無い。
「成る程・・良く分かりました。では、創業家の栄水産の株の話はどうなりますか?REC㈱が子会社としておりますが、30%は未だに保有している大株主です。創業家の意向は、少なからずあるのでは無いでしょうか?」
その点については屋鍋が、睨みを利かせていると自負していた。どうあがいても、今更創業家が実権を再奪取出来る事など無いぞと、言外に威圧しているのである。須崎は明確に答えた。




