信頼
「私はこちらで住むのも勿論初めてですし、私の故郷は宮崎なんです。だから生活環境も全く違うでしょうし、これから色々ご相談に乗って下さいませんか?」
「ええ、それは喜んで」
美弥は、こうして理恵と交流する事になった。秀一は、明らかに変わった㈱RECの新体制化で、須崎が居る限り、今後付き合って行けそうだとこの短い期間に感じていた。何より気難しくて面倒な父が、須崎とは信頼関係が出来ていて、この関係が今後自分達の発展にも繋がると確信していた。
パーティーは成功した。それぞれの思惑が複雑に交錯する。
にんまりと笑ったのは屋鍋だった。自分の上司に駆け上がった須崎が、本拠を根室に移し、実質的な北海道支社の実権を自分が立つ位置に、この男もVターンして来た。当然屋鍋に手をすり合わせる輩が出て来る。
そんな中で、前原郁子が須崎と対面していた。彼女は意気消沈し、義母は雄一郎の病院につきっきりとなり、君成は屋鍋に良いように扱われていた。既に主従が逆転していたのであった。又創業家としてのプライドが人一倍高い君成が、再び夜の街に出歩くようになっていた。四面楚歌の状態の中で、郁子は須崎の人柄に縋って来たのである。もはや、㈱RECを再び実権を取り戻して転覆させようと狙った彼女の万策はつきていた。




