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信頼
「どうしたの!又若菜服を汚して!」
理由も全く聞かず、若菜の制服が汚れている事を、母理恵はなじった。途端に俯き、何も言えない若菜。その態度が、更に理恵の怒りを加速させる。この場には三鍋が居ると言う事すら忘れたかのように・・
「あの・・お母さん、若菜ちゃんが服を汚した事の理由を聞いてあげて下さいね。きっと理由があると思うので・・済みません。私、須崎の家内になる予定の三鍋と申します。偶然にそこで若菜ちゃんとお会いしたものですから」
はっとした理恵。三鍋の存在が、まるで見えて無かった自分に、やっと気がついた。
「まあ!済みません。須崎さんのご婚約者でしたか?さあ、どうぞ。お入り下さい」
「あ・・いえ・今日は」
「いえいえ、私が主人や、義父に叱られます。親会社の会長夫人になられる方をそのまま帰したのでは」
三鍋はそう言うつもりでは無かったが、応接間に通された。立派な部屋である。若菜は自分の部屋に帰ったようだが、須崎の言うとおり、理恵と若菜には正常な親子関係は築かれていない事を感じた。




