信頼
何で初対面のこの女の人が、自分の事を知っているのだろう。若菜は驚き、見上げた。
「やっぱりそうなのね・・あのね、私、須崎さんの奥さんになる三鍋美弥って言うの。びっくりしたでしょうけど、須崎さんから鳩が大好きな女の子って聞いてたし、この公園にしょっちゅう居るって聞いてたから、ひょっとしてそうなのかなって思ったの。どうしたの?今日は、何で泣いてるの?」
優しい笑顔で言う美弥には、応対は自然なものだった。
「何でも無い・・何時もの事だから・・」
美弥は悟った。これは、学校でのいじめが未だに続いているのだと感じたのである。
「あのね、若菜ちゃん、お姉さん、こっちに住もうと思ってるの。だから、何かあったら、何時でも言ってね。それに、今度の婚約パーティー、若菜ちゃんも来てくれるんでしょ?色々お話しましょ、ね?」
極端な人見知りで、口数の少ない若菜であるが、美弥はそう若菜を見なかった。心の奥底に彼女が人に言えない何かがあるんだと悟ったのだ。美弥は長年客の応対をして来た受付嬢。大学時代は心理学を選考していた事もある。非常に聡明で、感受性にも鋭いものを持っている女性であった。だからこそ、須崎の内面を一番理解していたのは、彼女だったと言う事でもある。美弥は差し出がましいが・・と言いながら、若菜と一緒に佐伯家に訪問した。




