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少女と鳩
木下
「ここから先は言わない。君も聞かない方が良いと思う。つまりだね。佐伯氏には慇懃に接しても、これ以上の取引を望んではならないと君に忠告したかった訳だよ。君がここのTOPに立つ以上、これ以上佐伯氏ときまずい関係になってしまったら、現地採用の甲斐君や、進藤君が職を失う羽目になってしまう。君一人の行動で彼らを路頭に迷わす事など出来ないだろう?一人身の君だから、この会社を辞する気があるなら、それは止められないが、定年まで勤めようと思っているのなら、余程の事が無い限り、クビにはならない。何故なら、この根室営業所の年間取引額は、100億から5分の1に減ったとは言え、全営業所の中では、TOP3。考えようによっては、こんな楽な営業所は無いし、賃金も決して悪くは無いからね、同業他社と比べて。ただ、この先20年先は私にも見えないし、それは今年の8月までで退職する私にはもう無関係さ」
ここまで言われれば、須崎もどうしようも無かった。この地に飛ばされた時点で、辞表を書くなり選ぶ道はあった筈だ。副所長から夏には所長として、一応肩書き上は全国支店の一番下のランクに位置しても、世間一般的には出生したと見える。そして須崎には、この会社に留まる決意をした、理由もあったのだ。




