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帰還
盛り上がる席上であったが、秀一の表情は余り冴えなかった。理恵も同じであった。若菜は部屋に戻るように促される。酒宴が終わり、
応接間で佐伯は、息子夫妻と向かいあった。
「何だ?秀一」
「理恵と相談してた事だけど、俺達は栄海産と合併しようかと思ってる」
「何!誰がそんな事を承知した。佐伯海産はわしが立ち上げた会社だぞ!」
佐伯の顔は、見る見る真っ赤になった。
「分かってるさ。親父が反対するのは、けどな親父。もう時代は変わってる。海産もジリ貧状態。俺らがこの先力を持とうと思ったら、大きな組織にならざるを得ないんだよ。つくづく、今回の拿捕でそう思った。栄海産は、俺達と同じように拿捕されたのに、すぐ開放された。つまり、政治家の力が大きかったと思う。俺達は、民自党の安原先生を今後応援しようと思うんだ」
「まあ・・待て。言わんとする事の一端は分かる。けどな、そんな簡単にわしがうんと言う話では無いし、二人とも今は疲れてるんだし、今日は早めに休めよ、な?」
ここで話は終わったが、風雲急を告げるような展開になって行く。




