104/399
帰還
ようやく須崎が佐伯の所に顔を見せたのは、来週に戻って来る秀一、理恵夫妻を迎える祝いの準備中であった。
「申し訳御座いません!ご無沙汰をしてしまいました」
「君も忙しい重任の身、察するが、今回の件については佐伯海産も眼を瞑っている訳にはいかん、それに、秀一の方針も無視出来んしな」
顔を上げた須崎は、
「息子さんの方針とは?やはり・・」
「ああ、ニシン漁は2隻にして、近海のヒラメ、毛蟹漁に切り替えると言う事だ」
「お会いして、又お話が出来れば」
「まあ・・そのつもりだが、息子の嫁が、君の所とは取引を停止すると強硬でな」
「え!それは・・」
「分かっとるよ、わしは義理は通す。勿論、今回の拿捕解除の件が前原勇一郎から出た事も、息子達は知っとるし、わしがそうはさせん。けどな、須崎君。それにしても栄水産との取引は、わし等には解せん話だ。それは、わし等から栄海産に切り替えるつもりだと取られても仕方が無い話なんだから」




