帰還
「何!旭川営業所が、室蘭の栄海産と契約しただって?」
根室営業所長の安藤は、報告を受けて眼を剥いた。何故なら、栄海産とは、佐伯海産とはライバル関係の会社。そうなる事は、幾ら商売とは言え、他社への戦線布告、市場は乱れる事を意味する。佐伯海産とも難しい事になるだろう・・
佐伯は、安藤を呼んでいた。
「どう言う事だ・・栄海産とは、海産物で競合する会社。我が社との取引だけでは満足出来んと言うのかね?」
「いえ!そうではありません。当㈱RECは第一番に佐伯海産様を・・」
「分からん話だ。そりゃあ、商売だよ、君らがどこと契約するか、そんな事を口出す権利は私には無い。だが、一言そう言う流れを報告するのは、道理では無いのかい?」
「申し訳御座いません!」
安藤には、急激その流れが読めなかった。須崎に報告が行く。屋鍋を北海道支社に呼び、経緯の説明を受けるが、正当な営業活動の一環。それはむしろ新規開拓をした屋鍋に理があった。自信満々の顔で契約を取って来たと北海道支社に報告に来る屋鍋。思惑は分かっている。栄海産と取引すると言う事は、佐伯海産のみに頼りきっている根室営業所を強く牽制し、安藤所長の立場を弱くする事、即ち須崎へ一矢を報いる事になるからだ。




