1章ー3話「魚人・クァルファラの本気」
クァルファラ「遅い…!いったいいつまで待たせるんだ?」
ガーゴイル(下級魔物)「へ、へぇ…もうすぐで来るとは思います」
クァルファラ「俺は腹が減っているんだ。ワーシャルの野郎まさか奴を逃がしたな…?」
ワーシャル「そんなはずはございません!ただいま、お連れいたしました」
クァルファラ「チィッ。遅い。まったく、さっさと小僧を渡せ」
ワーシャル「(…では手筈通りお願いします)」
ラッシュ「(了解)」
ラッシュ「クァ…クァルファラ…」
クァルファラ「あぁん?小僧の分際で呼び捨てとは…様をつけろ様を」
ラッシュ「クァルファラ様…」
クァルファラ「フン。なかなか素直な奴だな。いいだろう、俺の部下にしてやる。ガーゴイル。世話をしてやれ」
ガーゴイル「ハ、ハッ」
‐クァルファラ御殿
ガーゴイル「ったく、人使い荒いよなクァルファラ様は」
ラッシュ「ガーゴイルさん…も嫌いなんですか?クァルファラ様を」
ガーゴイル「嫌いなわけではねぇけど、さすがにずっと一緒にいると疲れるよな」
ラッシュ「たぶん、この街の人も迷惑してると思う」
ガーゴイル「それは、人間が勝手に想っているだけの事だろう?第一クァルファラ様は人間自体に危害を及ぼしたりはしない」
ラッシュ「でも、この街の権力を握っていれば肉体的には危害を及ばせないかもしれないけど魔物に支配されているという精神的危害を及ぼすよ?」
ガーゴイル「ふむ、人間とはおもしろい生き物だ。色々な考え方をするものだ」
ラッシュ「ガーゴイルさんはクァルファラ様に反逆したりしないの?」
ガーゴイル「バカ言え、俺みたいな下級魔物が上級魔物…以上の強さを持つ者に対抗したら死しかない」
ラッシュ「そっか。もし、強い仲間がいれば?」
ガーゴイル「それは…まぁそいつの味方になるかな。クァルファラ様も倒すとかそういう目的ではなく…」
ラッシュ「僕と手を組んでクァルファラ様も倒さないか?」
ガーゴイル「は?何を言ってるんだ?そんなことするわけないだろうが!」
ラッシュ「そっか…」
ガーゴイル「お前は人間の奴隷だ俺の下で働く身。いいか?クァルファラ様に対抗するなんぞ考えるな無礼者」
ラッシュ「…」
‐クァルファラ御殿 最上階 クァルファラの間
ワーシャル「なぜ、この街にこだわるのですか?」
クァルファラ「俺様は厄介者か?」
ワーシャル「い、いえ…」
クァルファラ「第一、俺のお陰で表彰されたことがあるだろう?」
ワーシャル「ですが、あれは…」
クァルファラ「何が不満なのだ?」
ワーシャル「あれは…違法だったじゃないですか」
クァルファラ「臆病者め」
ワーシャル「…ですが、こう見えてもあなた様には感謝しております」
クァルファラ「ほう?どういう風の吹き回しだ?」
ワーシャル「実は、彼…ラッシュさんのお父様は隣王国で有名な葡萄酒を製造しております」
クァルファラ「ワインとな?」
ワーシャル「ぜひ、飲んでほしいと持ってきてくださったのです」
クァルファラ「俺は葡萄酒には口がうるさいぞ」
ワーシャル「ル・ドベッシュナロ1935年ものです」
クァルファラ「フムフム…漂う果実の香り 喉に感じる甘い葡萄の味…」
ワーシャル「…」
クァルファラ「ク…グー…zzzz」
ワーシャル「…ラッシュさんあとはお願いします」
‐クァルファラ御殿 地下 調理室
ガーゴイル「ゴ…ゴキブリだぁ」
ラッシュ「弱虫だなー ブチッ」
ガーゴイル「…な、なんてやつ!?ま、助かったぞ」
ラッシュ「確かにゴキブリは気持ち悪いしね」
ガーゴイル「なかなか…いいやつだな。お前」
ラッシュ「ありがとう」
ワーシャル「ラッシュさん!クァルファラ様がお呼びです」
ガーゴイル「…?珍しいな。クァルファラ様が人を呼ぶなんて」
ワーシャル「…ラッシュさん?」
ラッシュ「ガーゴイルさん、ごめんなさい」
ガーゴイル「?」
ワーシャル「ラッシュさん!」
ガーゴイル「ふん、まさかとは思うがクァルファラ様を?」
ラッシュ「うん。僕は人を傷つけられるのを見るのが嫌なんだ」
ガーゴイル「俺も嫌だけど…」
ワーシャル「ラッシュさん?なんてこと?」
ガーゴイル「いいよ、ワーシャル。俺もそろそろクァルファラ様に嫌気がしてたんだよ」
ワーシャル「ゴイルさん?」
ゴイル「俺の名前はゴイル。クァルファラ様からはガーゴイルと呼ばれてたがこれが本名さ」
ラッシュ「あいつ…人の名前を呼ばないなんて最低な奴だ」
ゴイル「ラッシュ。俺も協力するよ。この街は俺も好きだ。だけど、クァルファラ様…」
クァルファラ「ほぅ?裏切り者とな?ガーゴイル」
ゴイル「…クァルファラ様…」
ラッシュ「怯むな僕がついている!」
クァルファラ「人間如き負けるわけなかろうが」
ワーシャル「ゴイルさん、ラッシュさんお力をお貸しください」
ゴイル「おうよ!」
ラッシュ「もちろん!」
クァルファラ「いいだろう、みなまとめて食ってやろう」
‐???
???A「そろそろ始まりますね」
???B「しかし、ガーゴイルの奴裏切るとはな」
???C「弱い者こそ強い奴に付きたがる…」
???B「一理ある。しかし、あの小僧 クァルファラに勝てるのか?」
???A「それが次回の見ものでしょう」