人事を尽くせよ神頼み
人事を尽くして天命を待つ、なんて言葉がある。
それはきっとやれるだけのことをやったらあとは祈ることしかできないというある種の救いの言葉であり、或いはできる事を尽くして駄目だったら仕方ないという諦めの言葉でもある。
いずれにせよ神様に祈ってどうにかなるのは何かをした人間だ。
では勉強もせずノコノコと京都にある北野天満宮まで来て賽銭を投げ込んでいる自分は一体どうなるのだろうか。
まあ今から足掻いた所で三ヶ月後に迫る入試に間に合うとは思えないのだが。
ため息を吐き今回の旅行の言い出しっぺに目を向ける。
「ほら、君も祈りなよ。真剣に。折角連れてきたんだから」
彼女はこちらを一瞥するものの、再び目を閉じ何かを祈っている。
「いいよ、僕は。もう終わったから」
「もう、そんなんじゃ意味がないじゃん」
ただでさえ鋭い目つきをナイフのように尖らせ、その切先を僕に向けた。
思わず一歩後ずさる。
「だって、今から祈っても仕方ないだろ。神頼みなんて最後の最後にするものだ。僕はまだ始まってすらいない」
すると彼女は首を振り肩をすくめる。
「それは違うよ」
「違うって、何が?」
「祈りってのはさ、神様に対する意思表明なんだよ」
「意思表明?」
「そう。私は今からこれをやりますって、他でもない神様に聞いてもらうの」
「それで何が変わるんだよ?」
「変わるよ。だって神様はいつでも見てるからね。私だって敵わない。ずっとずっと見てるんだ。それなのに君は、サボることができるかい? 怖いよ、怒った神様は」
確かにここの神様の事を考えると、その言葉には説得力がある。
きっとここを選んだ理由もそれだろう。
どうやら彼女はまだ僕の事を見捨ててはいないらしい。
「でもそんな態度じゃ、君の事置いて行ってしまうかも」
歩を進め前をゆく彼女がこちらを見て笑った。
「それは困るな」
それを見て僕はやっと彼女の背中を追いかけた。




