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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

スーパナイトシオン先生のギャグ系小説

暗黒の森より出でし黄金の厄災《クリプトメリア・ジャポニカ》で魔王軍を蹂躙する。〜今年の飛散量2.5倍の最強バフがかかっているので、聖剣エクスカリバーとかマジでいらないんですが?〜

作者: スーパナイトシオン先生
掲載日:2026/04/09

「おいエリス、もっと抜き足差し足で歩け! 振動で粉が落ちるだろ!」

「ご、ごめんなさい! でもアレンこそ、そんなへっぴり腰じゃ魔王に笑われるわよ」


魔王城の最深部。禍々しい扉の前で、勇者アレンはまるで『絶対に傾けてはいけないショートケーキの箱』を持つような、極めて不自然な中腰姿勢で固まっていた。


彼の手にあるのは、伝説の聖剣エクスカリバーではない。実家の裏山で慎重に伐採してきた、極太のスギの枝である。


「だいたい何なんだよこれ! 俺、王都でちゃんとエクスカリバー引き抜いたんだぞ!? なんで王様は『魔王ボラギノールは花粉に弱いらしいから、これでいけ』って適当なこと言うんだよ! 剣帯にスギの枝を挿してる勇者なんて前代未聞だろ!」

「しっ、声が大きいわ! いい? それはただの枝じゃない。暗黒の森より出でし黄金の厄災……『クリプトメリア・ジャポニカ』よ」

「ただのスギの学名じゃねーか!」


文句を言いながらも、アレンはそっと扉を蹴り開けた。枝を揺らさないように、あくまで静かに。


「フハハハハ! よくぞここまで辿り着いたな、愚かな人間どもめ!」


玉座から立ち上がったのは、魔王ボラギノール。身長3メートル、全身から漆黒のオーラを放つ絶望の化身だ。


「いまだエリス!」

「ええ! 食らえ、最大出力『春一番』!」


アレンがバサァッ!とスギの枝を振りかぶり、エリスの突風魔法が黄金の厄災(大量の花粉)を玉座へと吹き飛ばした。


「ヌハッ!? な、なんだこの黄色い煙は……ゲフッ! 目が、目がぁぁ!」


突如として視界を奪われ、真っ赤に充血した目をこする魔王ボラギノール。

しかし、彼は腐っても魔王である。やられっぱなしで終わる男ではなかった。


「こ、小癪な真似を……! ええい、ならば我が究極の『滅びの業火』で、貴様らごとこの部屋の空気を焼き尽くしてくれるわ!!」


ボラギノールは大きく胸を反らし、究極魔法の詠唱のために、周囲の空気を腹の底まで思い切り吸い込んだ。


スゥゥゥゥーーーッ!!


(あっ)


アレンとエリスは同時に思った。

当然ながら、魔王の肺腑には致死量のスギ花粉がダイレクトに吸い込まれていく。


「滅びの……ッ、ほろ……ッ、ヘッ……」


ボラギノールの顔面がピクピクと痙攣し、威厳に満ちたオーラが急速にしぼんでいく。


「耐えろ……我は魔王ボラギノール……こんな、鼻の中がムズムズする程度のことで……ヘップッ!」


必死に鼻をつまみ、涙目で耐えようとする魔王。しかし、大自然の猛威は残酷だった。


「ヘップシュウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!!」


魔王城のステンドグラスを粉砕するほどの、特大のくしゃみ。

ビターン!!という激しい音が玉座の間に響き渡った。


くしゃみの反動で後方に吹き飛んだボラギノールは、己の鼻から飛び出したスライム状の鼻水で見事に足を滑らせ、大理石の床で後頭部を強打。「ピシューン……」という間の抜けた音と共に、巨体が白目を剥いて沈黙した。


静まり返る玉座の間。


アレンはおもむろにスギの枝を床に置くと、どこからともなく取り出した丸メガネをかけ、白手袋をはめた両手の指を顔の前で深く交差させた。

謎の逆光を浴びてメガネをキラリと光らせながら、彼は低く、ねっとりとした声で呟いた。


「……勝ったな」


その横で、エリスもまた腕を組み、冷徹な副司令官のような顔つきで応じる。


「ああ。今年の飛散量は、伊達じゃないわ」


かくして、伝説の剣も強力な魔法も使われることなく、ただの重度のアレルギー反応により、世界に平和が訪れたのである。

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