王太子殿下は婚約破棄を宣言すると、すぐに血を吐いて死にました
◇◇トリカブト◇◇
「お前との婚約を破棄する!」
この国の王太子であるユリウスは、わたしに向かってそう叫んだ途端に、血を吐いて苦しみ始めた。
「う゛っ……ぐぅ……がはっ!」
目を見開いて、喉を掻きむしっている。
ユリウスが右手に持っていたグラスは既に音を立てて床に落ち、敷き詰められた絨毯に染みを作っていく。
ユリウスの手の指と爪の間に挟まっている赤い血は、彼の口から吐き出されたものか、首を掻いたせいで出血したものなのか判断がつかない。
「殿下!」
「どうなさったのですか!」
「お気を確かに!」
驚いた周囲の人間が慌ててユリウスに駆け寄っていく。
そんな様子をわたしは白けた目で眺めた。
ユリウスが血を吐いて倒れたところで、もっと言えば、死んでしまったところで、全く同情できないどころかせいせいする。
わたしには前世の記憶がある。
ごく普通の大学生だったが、春休みに海外旅行に行くためにバイトに精を出し過ぎて、仕事明けの早朝のプラットフォームでグラッと来て、線路に転げ落ち、そのまま電車に轢かれた。
その後の記憶が無いから、多分そこで死んだ。
そして、気づけばこの世界の公爵令嬢として生まれてきていたのだ。
で、今世は悪役令嬢となった。
理解が早いのは、前世での趣味はWEB小説を読むことだったから。
自分が令嬢物WEB小説に出てくる悪役令嬢だと気がついたのは7歳のときだったか、8歳のときだったか。
そのWEB小説の内容はざっとこんな感じだった。
ヒロインは没落ぎみの伯爵令嬢で、王太子の婚約者候補に選ばれ、同じく候補となった他のご令嬢たちと争う。
その中で王太子といい感じになったものの、ヒロインを陥れた別の令嬢が婚約者に!
でも誤解が解けて王太子との絆を深め、ヒロインと敵対したご令嬢は断罪されてめでたしめでたし!
もちろんわたしは断罪されたくないので、礼儀正しく過ごしましたよ?
王太子の婚約者候補からも外れたかったけど、政治的な、なんやかやでどうしても外れられなかったのが残念ではあったけれど。
わたしは、この国一の大貴族である公爵家の令嬢--とはいえ父公爵は最近亡くなったので、今の公爵は兄だけれど--の立場だが、ヒロインたるご令嬢にも、他の婚約者候補にも理不尽な要求をしたことなど一度もない。
それなのに、いつの間にやらわたしは悪役。
これって、いわゆる原作の強制力っていうやつなのかしら。
そんなのくそくらえって思うけど。
今日のパーティーは外国の使節を招いてのもの。原作小説でも、悪役令嬢が王太子との婚約を破棄される場面だ。
実際に、ついさっき、苦しんで血を吐き倒れる前に、ヒロインを横に侍らせた王太子はこう言った。
「お前と婚約してしまったのは、俺にとっては一生の不覚。今、皆の前で破棄してやるからな」
王太子はわたしを侮辱する言葉を投げかける。
熱気のこもる会場から、わたしは一人、外の空気を感じるバルコニーで涼んでいた。そして会場に戻ってきて、それほど間もない所だった。
赤々と燃える暖炉の前で、わたしは先ほど従僕から手渡されたレモネードのグラスを、力をこめて握った。
一気に飲みほしたグラスには、ただ溶け残った氷が残るのみだ。
薄ら笑うユリウスを睨みつけたが、そんな視線がむしろ彼のわたしに対する優越感を高めたようだった。
あごをあげてわたしを見下ろし、にやにやと笑っている。
一方、ヒロインであるエリザに目を移してみると、彼女はぱっと瞼を伏せた。
過剰に気の弱い女だ。エリザはいつもびくびくしている。彼女がそんな風だから、わたしが悪いみたいになったのだ!
今だって、そんなにユリウスが好きなんだったら、この男はわたしの物だと主張したらいいのだ。そうしたら、そんな男は熨斗≪のし≫をつけてくれてやるんだから。
被害者面には反吐が出る。
わざわざわたしの前で、婚約破棄してやると宣言したのち、ユリウスはわざわざ大きな声を出した。
「お集まりの皆さん。今日はわたしから皆さんにご報告があります」
参加者たちはざわめき、ユリウスの言葉を聞こうと近寄ってきた。
そして、皆の前で婚約破棄を宣言し、その後、吐血して倒れたのだ。
◆◆センナ◆◆
わたしから見ればくだらないことだが、パーティーの最中に王太子が倒れたとあれば調査しないわけにはいかない。
わたしたちはパーティー会場の隣の一室に滞在することを求められた。
その部屋はパーティー会場の控室であり、参加貴族たちが休憩、その他の用事に用いるための部屋だった。
部屋の広さは、それなりだが、もちろんパーティー参加者すべてを収容するには足りない。したがって、いくつかの部屋に別れることになる。
わたしが、入った部屋は、その中でも一番広いものだった。
窓の近くに一つ、暖炉が設置されており、火が入っている。
その正面とその向い側それぞれに一人ずつ、大きなソファが設置されており、わたしたちはソファに腰かけて、成り行きに従うことになった。
王太子はどうなったのか、わからない。生きているのやら、死んでしまったのやら。
しかるべき人が対処にあたっているのだろう。たぶん国王陛下や王妃さまも王太子の傍にいるに違いない。
一方、わたしたちは、王太子の祖母で、国王の母である王太后様は、わたしたちと同じ部屋に滞在し、集まった面々を前に口を開く。
王太后様は、御年六十をすぎた今でも十分に美しく、ピンと伸びた背筋からも気品があふれている。
「何が起きたのか明らかにしなければ。メディアス、状況を説明せよ」
王太后に指名されたメディアスは王太子の側近だ。
「殿下は、パーティーが始まるとすぐに、方々のご挨拶をお受けになりました。隣国使節、貴族のお歴々。全員を記憶できているかというと、わたくしも混乱しておりまして、自信がありませんが……」
「それは今はよい。先を」
「はい。そして、ユーリエ伯爵令嬢と合流されました」
ユーリエ伯爵令嬢というのが、王太子の恋人であるところの女で、わたしの隣に座っている。
「そこで、王太子殿下とユーリエ伯爵令嬢はご歓談におよび、その際に、好物のローストビーフと少しの野菜を召し上がられました」
メディアスがそう言った瞬間、提供された料理を思い出したのか、後ろからひそひそと話す声が聞こえてきた。
「あの、ローストビーフはうまかったな。特にソースが。何が入っていたんだろう」
「俺も同じことを思った。だから手近の従僕に聞いたんだよ。そしたら、隠し味にチョコレートを入れていますってさ」
「へー」
彼らが、そんなどうでもいい話に興じたくなる理由もわかる。
張り詰めた空気感に耐えられなくなったのだろう。
わたしだって、できることなら、おいしかったデザートの話をして回りたい。
だが、彼らは王太后様に一睨みされて、すぐに黙る。
王太后様はメディアスに視線を戻した。
「ユーリエ伯爵令嬢と一緒にということか?」
「はい」
「同じ皿から食事をしたのか?」
「いえ、決してそのような。別々の皿からでございます」
「では、給仕した従僕に話をきかなければならないな」
「ごもっともでございます」
「その件は一度置いておこう。続けよ」
「はっ」
王太后様の質問に、メディアスは汗をかきながら答えていく。
◇◇トリカブト◇◇
王太后様が続ける取り調べを、頭の隅で聞きながら、大きな窓から夜空を見上げた。
今日は、満月を一日過ぎた日だ。
日本でなら十六夜と言われる日に当たる。
そもそも、わたしが王太子の婚約者候補から外れることができなかった一番の理由は、我が母が国王陛下の妹にあたるからだ。
わたしにとっても祖母にあたる王太后様は、それは家格を大切になさっている。
身分の低いものが王室に入るなど、もっての他、というわけだ。
その点、わたしは建国以来の由緒正しい公爵家の血を引き、さらに現王の唯一の妹である母を持っている。
血が近すぎるなどということは、王太后様のお考えにはないのだろうし、親子やきょうだいでなければ、婚姻に差し障りなどないというのが、この世界での一般的な思考のようだった。
そのとき、休憩室の扉が開き、従僕が一人入ってくると、静かに王太后様に近づき、何やら耳打ちした。
王太后様は、ただでさえ厳しかった顔を険しくし、鋭い視線をわたしたち一人ひとりにそそいだ。
そして、重々しく口を開く。
「…………王太子が、死んだ」
短く息を呑む声が、聞こえてきた。
「そんな……」
「まさか、殿下が……」
わたしたちは皆、血を吐くユリウスを見ている。当然、あの倒れ方を見ていれば、死んでもおかしくないとは思わなかったはずがないが、それでも、こうして口に出されると、信じかたい気持ちになるのだろう。
王太后様は自分こそが犯人を見つけるのだとでも言いたげに、わたしたちを睥睨し、そして言った。
「さて、次はそなただ」
王太后様の次なる標的は、わたしの隣の女性、伯爵令嬢エリザだった。
「はいっ」
気の弱い彼女は、王太后様の視線を受けると、面白いくらいにビクッと肩を震わせた。
彼女とわたしの間に置かれたエリザの小さなバッグが、その振動で揺れるほどだった。
そのバッグの動きを観察しているだけで、エリザがどう振る舞っているかわかるほどだ。
甲高い声で王太后様に返事をして、王太后様は美しい柳眉をひそめた。
「そなたは王太子とずっと一緒にいたのか?」
「は、はい」
「誰かが、王太子のもとに挨拶に来たりはしなかったか?」
「はい。いらっしゃいました」
「それは誰だ?」
「それは……」
エリザはそう言いながら、わたしをちらりと見た。
そして、目を伏せ、小さな声でわたしを名指す。
「アリシア様です」
隣に座る兄がわたしの手をギュッと握った。兄は、大丈夫だと言うように、微笑んだ。
わたしはエリザのやり口に腹が立って仕方がない。
あんな風に思わせぶりにわたしの方を見て、わたしがなにか悪さをしたとでも言いたげな仕草を続けて。
王太子はそれに騙された。
人を見る目がないのだ。
かつてこんなことがあった。
ある日、婚約者候補たちを集めて、お茶会を主催した。
その日は晴天で穏やかで心地がよかった。公爵邸のテラスに幾種類もの紅茶と、軽食を並べ、ご令嬢方と笑い合う。
もちろん、お互いをライバルとみなす令嬢方と真の友情を築けようはずもないが、表面上仲良くすることは必要だった。
エリザは、初めに挨拶をしたきり、暗い顔で俯いて、お茶にもお菓子にも手を付けようとしなかった。
そんな顔をされては、空気が悪くなる。はっきり言って、エリザのことに関心など少しもなかったが、主催者の立場では声をかけざるをえない。
「どうなさったの? エリザ様? 体調でもすぐれませんか?」
手にしていたティーカップを皿に戻しながら首をかしげる。
エリザはそれを見て、なぜだか震えた。
「い、いえ。お気遣いにはおよびません」
唇を青くさせて、ぶるぶる震える指で自分のドレスの襟元を掴みながら言う。
「あら、でも。とてもご気分が悪そうですよ。ごめん遊ばせ。何かお気に障ることでもありましたか?」
重ねて聞いても、エリザはさも恐ろし気に首を振るばかりだった。
「いいえ、いいえ」
顔を真っ青にして震えている女を前に、どんな風に話を盛り上げることができるだろうか。
エリザ以外の面々は白け顔でお互い顔を見合わせた。
もしかして、彼女は体調が悪いと言って、自分が話題の中心になりたいというタイプの人なのかもしれない。
仕方がない。これも主催者の役割だろう。エリザにもう少し気を遣おう。
そういえば、原作小説では、悪役令嬢はお茶会でエリザの流行遅れを嘲笑し、さらにわざとお茶をこぼして彼女のドレスを汚した。
そのドレスはエリザの母のたった一着の形見のドレスだったのに!
もちろん、わたしはそんなしょうもない嫌がらせなどするつもりはない。
「エリザ様。素敵なドレスですね。首元のレースがエリザ様のすっきりとしたお首によく映えていらっしゃいますこと」
エリザにそう声をかけると、エリザはさらにビクッとした。
わたしは内心で嘆息した。どうしろっていうの? もう知らん。
「エリザ様、せっかくお茶会にいらしたんですもの、どうぞお茶を召し上がってね」
最後にそう声をかけて、他の婚約者候補たちとの会話を続けようとした。
そのとき、エリザは何かを決意した目でわたしを見ると、ティーカップを手に取って、一口、口に含んだ。
そして言った。
「た、たしかにわたしのドレスは古いです。流行遅れです。でも、母の形見で大切なドレスなんです。それを、それを! なぜそんな風におっしゃるのですか!」
ぶるぶる震えながら涙まで流して。
そして、その振動で、手に持っていたティーカップから紅茶が溢れ、彼女が大切だというドレスの裾にこぼれる。
それにしても、なんのこっちゃだ。
わたしは呆れたまま、それでも礼儀上エリザに声をかける。
「紅茶が溢れてしまっていますよ。一度テーブルの上に置いて下さい」
エリザはわたしの言葉に驚いて、立ち上がり、その弾みに紅茶をすべてドレスにこぼしてしまった。
「ひどい! あんまりです」
エリザは声を上げて泣く。
あまりのことに、二の句がつけない。
だいたいドレスを褒めたのは、まあそりゃお世辞だけど、だからと言って悪い方に取られてもこまる。
わたしや他のご令嬢方は最新の流行に基づいたドレスだが、彼女のドレスは古い物だった。
それをあえて褒めたのが、嫌みだと捉えられたのだとは思うが、いちいち深読みしないでほしい。
単なる社交辞令だと思って、お礼を言い、エリザの方もわたしの身につけているものを礼儀上適当に褒めておけばそれで済んだ話なのだ。
会話のための会話にいちいち悪意などないし、探す必要もない。
ドレスに紅茶をこぼしたのだって、100%本人の自業自得ではないか。なぜわたしが悪いことになるのか。
わたしがあれほど気を遣ったにもかかわらず、原作通りの展開になって、気が重くなった。
◆◆センナ◆◆
王太后様は、頭痛がするのか指でこめかみを押さえた。
王太后様の孫だからか、王太子も頭痛持ちなのそうだ。
王太后様は、このような事態になったことを憂慮されているに違いなかった。
「して、ユーリエ伯爵令嬢、その後は?」
王太后様は、再び彼女に向き直り、やや疲れた声で先を促した。
彼女は俯いてスカートを握りしめ、王太后様に向かって答える。彼女の意識のすべてが今は王太后様の質問にどう答えるのか、ということに向いているようだった。
「はい。その前に、えっと、ルーレイド伯爵と、アーメット子爵夫妻ともご挨拶をしておりました」
「それですべてか?」
「はい。王太子殿下はこのような場で多くの方と挨拶するのは面倒だと、庭に出ておしまいになられたので」
「なんと。王太子としての自覚が足りないようだな」
王太后様の言葉に、周囲に貴族たちは俯いた。
王太后様は持っていた扇をピシリと自分の手に打ち付けた。
「それについては、今言っても詮無いこと。
で、その貴族たちは、なにか不審な行動があったか?」
「あの、それは……、ルーレイド伯爵と、アーメット子爵夫妻は特になにも、少し挨拶されると、すぐに下がられました」
「ふむ……」
「でもあの方は違います。あの方は、殿下に飲み物を勧められ、殿下もそれを口になさいました」
「そなた、我が孫娘が怪しいと?」
「いえ……、それはわかりませんが……」
わたしに疑いが向くような発言に、王太后様は声を鋭くした。
その声にびくりとしたユーリエ伯爵令嬢は、また小さな声で答えた。
「メディアス」
「はっ」
「ユーリエ伯爵令嬢の証言、相違ないか?」
「はい。相違ございません」
メディアスの答えに、王太后様は扇を広げて口元を隠した。
「その時の孫娘の行動をもう少し詳しく聞きたい。ユーリエ伯爵令嬢、話すが良い」
「は、話すと言っても、大したことは話せませんが、ただあの方は、両手にグラスを持っておられ、その一方を殿下に渡しました。殿下はそれを飲まれました」
「お待ちください」
わたしはたまらずに声をあげた。
「申し上げます。確かにわたしはあのとき王太子殿下にグラスをお渡ししました。でも、そのグラスに問題があったとは考えられません。従僕に命じて用意させたレモネードですから」
そこまで言うと、王太后様は、薄らと見る者を凍らせるような笑顔を浮かべてわたしを見た。
◇◇トリカブト◇◇
「でも、アリシア様が殿下にお渡しになったのではありませんか」
エリザが恐怖で目を見開いたとでも言いたげな表情でわたしを見た。
わたしは、疑われるべきところなど何もないという態度で胸を張る。
「はい。そうです。わたしが差し出したグラスを殿下は受け取られました。
殿下のグラスにのみ、美しい白百合の花びらを浮かべたのですが、殿下はそれをご不快に思われたようで、わたしのグラスと交換せよとおっしゃいました。
もちろん、わたしは白百合のレモネードを殿下と歓談中に飲み干しております。
殿下がグラス交換を命じられることなど、わたしわかろうはずもありませんもの、なにか悪いものを混入させることなど不可能です」
「我が孫の言うことは本当か?」
王太后様はエリザに視線を向けた。
「は、はい。白百合の花びらを見た瞬間、殿下は目がチカチカするとおしゃって……」
「ふむ……。で、二人して庭に行ったのはいつだったか? そしてその庭では不審なことはなかったのか? 何か不審な植物を触ったりとか」
王太后様のわたしに対する疑惑は解けたらしく、わたしとレモネードを飲む前の話に戻った。
「ルーレイド伯爵と、アーメット子爵夫妻が続けてご挨拶にいらっしゃり、その後、1時間ほど庭におりまいた。そこでは特に。ただ、二人でベンチに腰かけて、夜空を眺めておりましたので」
エリザがそこまで言ったとき、暖炉が音を立ててはぜた。
王太后様はそれを気にせずにエリザに問いかける。
「それで、庭からパーティー会場に戻った後は?」
エリザは熱心に王太后様を見つめて、自らの疑惑を晴らそうとするかのように語りかける。
その目は王太后様しかみておらず、わたしのことは、意識のかけらにもないようだった。
「庭園からパーティー会場の賑わいを眺めておりまして、殿下が上着を貸してくださったので、問題なかったのですが、ちらちらと雪も降ってきて、寒さもこたえるようになり、会場に戻りました。そこで、アリシア様としばらくの間お話をされ、12時になるとすぐに、皆さまの面前でその方との婚約破棄を告げられ……。後のことは皆さまもご承知の通りのことです」
エリザは、途中で自らのバッグがソファから落ちたことにも、わたしがそのバッグを拾ってやったことにも気づかず、話を続けた。
そして、最後にはわたしに恐ろしいものでも見るような視線を向けた。
はっ、と嘲笑が溢れる。
そういう目を向ければ、すべて自分の思い通りになると考えているなら、それが間違いであると教えてあげたい。
わたしはこれ以上、我慢はしない。
それというのも、エリザと王太子に父を殺されているからだ。
あの日、わたしたちは狩猟祭に出かけた。この日は原作で、父が死ぬことになっていたので、すごく緊張していた。
原作では、悪役令嬢たるわたしがエリザの死を願い、父親にお願いして、事故に見せかけてエリザを殺すように頼むのだ。
そして、父親は実行にうつすが、失敗してもみ合っているうちに、事故によって命を失ってしまう。
以前のお茶会で、原作の強制力のようなものを感じていたわたしは、はじめこの狩猟会を欠席するように促した。
だが父は、わたしの心配を笑って受け流し、狩猟会への参加を決めたのである。
仕方なく、わたしは何があっても絶対にエリザに銃を向けないように父には強く要請して、送りだした。
わたしたち女性陣は、狩場に足を踏み入れたりはせずに、狩場となる鬱蒼と茂る森林に入る前の開けた広場に天幕を張って、そこでお茶などしていた。
そのとき、いつも通り俯いて会話に加わろうとしていなかったエリザが急に立ち上がった。
「どうなさったの?」
驚いて尋ねたが、エリザはわたしの問いには答えずに、男性たちの獲物を追う声と銃声がときおり聞こえてくる森の方へと走り出した。
いったいなんなの?
腹が立つが、一人で行かせれば、どうなるかわからない。
わたしも彼女を追いかけることにする。
今日はは狩猟会なので、スカートはいつもよりも短めで地面に着くほどではないとはいえ、中高時代に着ていた制服のスカートなんかとは比べものにならないくらい長い。
足元はブーツなので、まだしも走りやすいが、それでも走ると、スカートの裾を踏んづけそうになる。
エリザはよくもまああんなに早く走れるものだ。
それでも、なんとかエリザに追いついて、彼女に聞いた。
「どうなさったのよ。こんな風に、突然狩場に入りこむなんて。ここは危ないから、早くもどりましょう」
わたしは女性陣の待つ場所へとエリザを連れて帰ろうと、彼女の手を握ろうとしたが、彼女は慌てて自分の手を引っ込めた。
そして、恐怖に見開いた目でわたしを見る。
その態度に眉根を寄せる。
なんなの? いったいエリザはなにがしたいのか。
思わず一つ溜息を着く。
そのとき、エリザの近くの茂みから父が銃を持って出てきた。
父はわたしたちを見つけると目を見開く。
「こんなところで何をしている。ここは危ないから、はやく戻れ」
そう言ってわたしたちに向けて手を振った瞬間、エリザが悲鳴をあげた。
「いやーっ、やめてください」
はっとして、エリザに近づく。
「エリザ。何をおっしゃってるの。さ、早く皆様のところに戻りましょう。お父様も早く戻ってください」
これ以上、エリザと父を一緒にしてはいけない。
わたしはエリザの腕を掴むと、やや強引にひっぱろうとした。
バーンッ
銃声がしたのはそのときだった。
まさか……
わたしは父の姿を見るのが恐ろしかったが、それでも大丈夫だからと自分に言い聞かせてそちらを見た。
「お父様っ!」
胸を撃ち抜かれたらしき父は、わたしの目の前で、どうっと馬から落ちた。
なぜ? どうして?
なぜこうなってしまったのだろうか。
「エリザ! 大丈夫か?」
そう言って、王太子が茂みの向こうから姿を現す。その銃の先からは煙があがっており、父を撃ったのは王太子であることは明らかだった。
愕然として王太子を見つめると、王太子は顔を真っ赤にして怒りはじめた。
「お前の父親が、エリザを撃とうとしたのが悪い! お前の父のせいだ!」
だが、王太子のお付きのものたちは状況を察して顔を青くし始めた。
「殿下、このようなことをしでかして、ただではすみませんよ」
「そうですよ、殿下。陛下になんと申し上げれば……」
従者たちは父に近づき、助けようとするが、近づくほどに顔色が悪くなっていく。
「……で、でんか」
父は最後の力を振り絞るように言った。
「……わたしを、鹿と間違えたとおっしゃりなさい」
父は、そう言うなり、ごぼりと血を吐く。
「お父様!」
わたしはこらえきれずに父に取りすがり、涙を流した。
「お父様、お願いです。喋らないで」
だが、父はわたしではなく、王太子に向かって話を続けた。
「これは、事故ですぞ。ですから、どうか、むすめを、むすめをよろしくお願いします……」
父はそう言いながら、王太子に向かって手を伸ばした。王太子はそんな父の言葉にほっとした様子で頷く。
「そうだな。これは事故だとも。うん。まかせておけ」
王太子がそう言うと、父はわたしに向き直る。
「お前もわかったな。アリシア。これは事故だ」
「わかりました。わかりましたから」
わたしは父の手をとったが、涙は次から次にあふれてきて、とまらなかった。
父は、その後まもなく死んだ。
父の死は事故で片づけられたが、わたしにはわかっている。父はエリザと王太子によって殺されたのだと。
「ふむ……。婚約破棄を皆の面前で宣言されたとはいえ、先ほど、アリシアが申した通り、王太子の希望でグラスを交換している。毒殺など不可能だ」
王太后様は眉間に皺をよせて考えに入られた。
◆◆センナ◆◆
しばらく後、王太后様が顔を上げる。
「伯爵や子爵もただ話しただけであるのだか、もっとも疑わしいのは、一緒に食事をしたユーリエ伯爵令嬢、そなたということになるな」
王太后様の鋭い目を向けられ、彼女は息を呑んだ。
「王太后様! わたしはなにも知りません!」
「わかっておる。ただちにそなたを下手人だとするわけでもない。ただ、疑いを晴らすためにそなたの荷物を調べさせて欲しい」
王太后様はそのように要求したが、これは事実上の命令である。
「わたしじゃありません! 本当になにも知らないんです!」
何度も悲鳴をあげるが、王太后様の背後に控えていた侍女が彼女の抱えていた小さなバッグを取り上げた。
そして、うやうやしく、王太后様に手渡す。
王太后様はそれを受け取って、中を開いた。
中には、ハンカチやポーチのようなものが細々入っていたが、王太后様はその中の一つを取り出した。
◇◇トリカブト◇◇
「これはなんだ?」
そう言って王太后様がつまみあげたのは小さな瓶だった。
親指くらいのサイズで、ガラス製の薄青い半透明の小瓶だ。
同じくガラスの栓がされている。
「そ、それは……」
エリザは、その瓶をみておどおどし始める。
「それは?」
王太后様は厳しく先を促す。
「それは、わたしの薬です。ここのところ血の巡りが悪いような気がして、医者に相談したところ、この薬を処方してくれたのです」
「ほう? それは真か?」
「誓って、偽りは申し上げておりません」
エリザの真剣な顔に、王太后様は首を傾げた。
「それならば、証明してみよ。血の巡りの薬と言うならば、今飲んだとて、命に差し障りはあるまい? もしかすると、多少は体調に影響はあるかもしれないが。しかし、そなたの身の潔白を証明するためだ。その薬を飲め」
◆◆センナ◆◆
王太后様に命じられた彼女はほっとしたような顔をした。
実際に、小瓶の薬を飲めば身の証がたつと考えているのだろう。
王太后様に手渡しされて、彼女は小瓶の蓋をキュポンと音を立てて開けると、躊躇なく、その薬を飲みほした。
「王太后様、これでよろしいでしょうか」
◇◇トリカブト◇◇
エリザは小瓶に入っていた薬を飲み干すと、ゆっくりとその小瓶を下に下ろし、蓋を閉じた。
そして、王太后様に向き直り、震えながらも決然とした目を向けた。
「うむ」
王太后様は長い間エリザに異変がないかどうか観察していたが、やがて満足そうにうなずいた。
しかし、その瞬間のことだった。
エリザが苦しみだしたのは。
「ゔゔ、ああああ!」
うめき声を上げながら、椅子から転がり落ち、ゴボリと、血を吐いた。
まさに先ほどの王太子と同じような症状だった。
エリザはしばらく苦しんでいたが、やがて彼女
の動きは停止した。
絶命したのだ。
「ふむ。なるほどなあ。やはり、この女の仕業であったか」
「御意にございます。おそらく逃げ切れぬとわかって死を選んだものと」
王太后様の侍女が頷く。
◆◆センナ◆◆
「さて、事件は落着したな」
王太后様が晴れやかな顔でわたしたちを見回した。
「せっかくのパーティーに水を差された。今日のところは皆解散してくれ。後日、また楽しもうではないか」
王太后様はそう言って立ち上がり、部屋に集っていた面々に帰宅を許した。
わたしもほっとして立ち上がる。
そのとき、王太后様がわたしを引き留めた。
「そなたには、話がある」
「え?」
「部屋に参るがよい」
「は、はあ」
王太后様と侍女に促されて、わたしは王太后様の私室へと向かった。
王太后様の部屋は城内でも奥まった比較的静かな場所にある。
あらかじめ準備してあったのだろう。
暖炉の火が調度よく室内を暖めており、その前のソファには鮮やかな色味の綴織がかけられている。
「座りなさい」
促されるままに、わたしは王太后様の隣に腰掛けた。
王太后様の侍女が王太后様とわたしにお茶を手渡す。
「夜だから、少しブランデーを入れようか」
王太后様はそう言って、わたしのカップにもブランデーを一滴たらしてくださった。
王太后様はお茶を一口すすった後に、皿にカップを戻す。
そして、わたしを見て、口を開く。
「そなただな」
……やっぱりバレていたか。
王太后様が気がつかないはずがないことではあるけれど。
「一応聞こうか。どのように遂行したのかということを」
そう、これは答えあわせだ。
わたしは息を吸って、王太后様へと解答を口にした。
「頭痛です。王太子は頭痛持ちです。彼はいつも頭痛のときは白いものは見たくないと言っていました。だから、レモネードのグラスに白い花びらを入れれば、王太子は嫌がるに違いないと思ったのです」
「頭痛持ちとて、毎日頭痛がするわけでもあるまい?」
「今日のパーティーのメニューは事前に入手していました。王太子はローストビーフが好きなことも知っていましたし、ローストビーフのソースに隠し味としてチョコレートが入っていることも。
むしろ、そのメニューを見たときに、この計画を実行しようと決めたのです。
王太后様も、頭痛持ちでいらっしゃいますから、ご存じでしょう? チョコレートが頭痛を引き起こすと。
王太子が人と話すのを避けて、ユーリエ伯爵令嬢と二人っきりでいたのも、おそらく頭痛で人混みの中にいたくなかったからだと思います」
ここまで、話しても、王太后様はまだ黙ったままだった。
鋭いまなざしが、わたしに続きを促している。
わたしは話を続けることにした。
「わたしは二つのグラス両方に毒を仕込んでいましたが。わたしが無事なのは、毒はグラスやレモネードではなく、氷の中にいれたからです。氷が溶ける前にグラスを飲み干せば、わたしにはなんの悪影響もありません。
調度、暖炉の前で王太子は話をしていましたから、わたしとは違ってゆっくりレモネードを飲んだ王太子のグラスの氷は暖炉の熱でとけたのですね。
氷は溶けないようにバルコニーに準備しておきました。あそこは寒いので、毒が溶け出さないのです」
王太后様の表情を見れば、わたしの答えが間違っていないとわかる。
だから、答え合わせの最後を口にする。
「ユーリエ伯爵令嬢は隙だらけですから、先ほどの尋問の際にそのバッグの薬を差し替えることは、それほど難しくありませんでした」
王太后様は、ようやくにやりと笑った。
「見事だ」
「ありがとうございます」
達成感に打ち震えながら、わたしは王太后様に頭を下げた。
顔を上げると王太后様は、機嫌良さそうに笑って言った。
「ジェーン、よく解いた。で、王太子セシルの具合はどうだ?」
◇◇アリシアの物語◇◇
エリザの死体はわたしたちの前から速やかに運び去られた。
「なんてことだ、まさか彼女が……」
隣の兄は未だに呆然としているが、彼に事実を話すつもりはない。
兄は知る必要がないことだ。
トリカブトは紫の美しい花だ。だがその花は花粉にまで毒がある。
今回は根から抽出した毒を用いた。
そして、王太子もエリザも死んだ。
わたしの父を殺したのだから、当然の報いだ。
同時に、ほっともしていた。
原作強制力の強さを実感していたからだ。このままいけば、婚約破棄されてしばらく後、わたしも兄も王太子たちに殺されるはずだった。
殺される前に先に殺すしかなかった。
これまでのわたしは常に受け身で、原作を改変しようとはしたが、同時に怖れてもいた。
だが、今回、わたしは自分の命をかけた。
氷の中に毒を入れたからといって、絶対に安全という確信はなかった。
それに、王太子が交換を提案しなければ、わたしへの疑いは避けられなかっただろう。
そのときは、わたしも王太子と一緒に死ぬつもりだった。疑いの目をわたしに向けさせないために。兄に迷惑をかけることはできないから。
その決意が、わたしの運命を変えたのだと、そう信じる。
◆◆ジェーンの物語◆◆
王太后様の部屋の扉がノックされ、セシルが部屋に入ってきた。
セシルはわたしの双子の弟で、この国の王太子である。
さっき王太后様の部屋に来る前にセシルの様子を見に行くと、体調はかなり回復したようだったので、後で王太后様の部屋に来るように言っておいたのだ。
弟がパーティーを中座したのは、王太后様による40年前の復讐譚をもとに、わたしは弟にセンナという植物から抽出した下剤をしこんだからだ
「それにしても、大胆な。まさか実行するとはな」
「弟を窘めるためですもの」
「王太子はよくやっている。女にうつつを抜かすことさえしなければな」
「ユーリエ伯爵令嬢はいいこです。ちょっと気が弱いだけで。でも王太子のせいで彼女まで悪く言われるんですからセシルには自覚を持って欲しいところです。いい薬です」
セシルは、項垂れてわたしたちの説教を聞いていた。
「だからといって、飲み物に下剤をしこまなくたっていいだろう。とんだ恥を掻いた」
今日は、王太子の誕生日パーティーだったのだ。王太子が誕生日にあたって、参加者の面前で抱負を述べている最中に、下剤にあたって化粧室からでてこられなくなった。
その後、王太后様主導で、調査が行われたけど、セシルが回復したという報告も入り、薬を飲んだユーリエ伯爵令嬢にも異常はあらわれなかったので、単にセシルのお腹の調子が悪かっただけということで決着したのだった。
そう。ユーリエ伯爵令嬢の薬と差し替えたのは、ただの水だ。彼女には、命に関わる持病があるわけじゃないということは調査済みだったので、そうさせてもらった。
ユーリエ伯爵令嬢は、今頃はセシルを心配しながら家に帰っていることだろう。
馬鹿な弟と付き合ってくれている彼女には感謝しかない。
「でも、ジェーン、なんだってこんなこと企んだんだよ」
セシルが拗ねた顔でわたしに尋ねる。
「もちろん、あんたを懲らしめるためだけど、おばあさまがおっしゃっていた、40年前の復讐を自分なりに解釈したくなったの。ほら前に一緒に聞いたでしょ?」
「なんだっけ?」
「おばあさまは若い頃、隣国の公爵令嬢で、その国の王太子と婚約してたって。でも、その王太子がおばあさまのお父様を殺してしまったから、復讐することにしたって。
そのときは、レモネードと白百合を使ったって状況だけを説明されたけど、わたしなりに推理して、おばあさまはどんな方法で復讐をなしとげたか、それを実行してみたくなっちゃったの」
そう、わたしは祖母のやり方をなぞっただけ。
含み笑うわたしにセシルは呆れた表情を見せる。
「いや、実行してみたくなっちゃたのって……」
「さっきおばあさまに、推理を披露したら、見事だってお褒めの言葉をいただいたわ」
そう言って、セシルにも下剤を飲ませた方法を教えてやる。
嫌そうな顔をしながら聞いていたセシルだが、首をかしげた。
「それにしても、俺もその殺されたユリウスっていう王太子も頭痛持ちなんて、すごい偶然だな」
「あら、偶然とは言えないわ。おばあさまがおっしゃってるでしょ。頭痛は親から子に子から孫に受け継がれる類いのものだって。アリシア様--おばあさまの祖母である隣国の王太后が頭痛持ち、その孫のおばあさまとユリウスも頭痛持ち。おばあさまの孫のセシル、あなたも頭痛持ち。これは必然なのよ」
「でも、お前は頭痛持ちじゃないじゃないか」
「幸いにね。そういうこともあるわよ。それにしても、おばあさまの復讐の件、一緒に話を聞いていたのに、疑いもせずにレモネードを飲むなんて、馬鹿ねえ」
「…………まさか双子の姉弟に裏切られるとは思わないだろ」
「例えだれでも、信用したらいけないわ。いい勉強になったでしょ」
わたしが言うと、セシルは無言で天井を見上げた。
「はははは」
「ふふふふ」
わたしたちのやりとりが面白かったのか、王太后様と侍女は二人して笑う。
「わたしはいい孫を持った。亡き先王陛下と結婚して、子どもや孫に恵まれ幸せだった」
王太后様はしみじみとつぶやかれる。
王太后様の生まれ故郷の隣国は、先王陛下の時代に戦争になり、我が国に攻め滅ぼされている。
王太后様の兄君は、当時この国に亡命し、今でもこの国の貴族として尊重されている。
「かつて、わたしが隣国の王太子とその恋人を殺したとき、誰も気づく者はいなかった。王太子ユリウスの、そしてわたしの祖母でもあった王太后様も、エリザが犯人だと思い込んだものだ。ジェーン、そなたのような切れ者が一同の中にいれば、わたしは今ここにはいないかもしれないな」
おばあさまのその言葉にわたしは首をふった。
「あら、おじいさまはきっと気づいてらしたと思いますよ。それでも、いえ、だからこそおばあさまに惚れたに違いありません」
◇◇アリシアの物語◇◇
兄と二人で、部屋を出ようとしたそのとき、これまで部屋の隅でだまって一部始終を見守っていた男が立ち上がった。
あれは、確か隣の大国の王子だ。
今日のパーティーに招待された外交使節の一人だ。
彼は足音も立てずに、わたしをじっと見つめて近づいてきた。
今はじめて彼を間近で見たが、背が高く、見栄えのする人だった。
彼は、楽しげな笑みを浮かべてわたしの傍で立ち止まる。
なんだろう。猛獣に狙われた獲物みたいな心地がする。
そうして、彼は口を開いた。
「アリシア嬢、どうかわたしにお時間をいただけますか?」




