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第1章 出逢いはさつまいも


「アイリス…!アイリス…!!」


視界が狭くなっていくと同時に必死に私の名前を呼ぶ声が聞こえた、何度も聞いた愛しい貴方の声。

人間は死ぬ時、聴力が1番最後まで残るらしい

これを聞いた時は豆知識くらいにしか思っていなかったが、今はこんなにもその事に感謝している。

最後に貴方の声を聞いて死ねるなんて幸福極まりない事だ。


私は最期の力を振り絞り、この言葉を貴方に送った。


「っシル……愛してるわ…」



________

1000年後



「エステラー!ちょっと手伝ってくれ!」


「今行きまーす!」


この農作業を淡々とこなしている私、

エステラ・ローウェルは前世の記憶を持っている

前世は今とは真逆の生活、以前は所謂魔女という

存在で、それはそれは軽蔑されて生きていた。

最後には魔女狩りに鋭い剣で刺される始末・・・


(あぁ、あの光景は本当におぞましかった・・・)


そんな残酷な人生に比べたら、今このさつまいもを

呑気に両手いっぱいに抱えてることが平和すぎて怖いくらい。


(今は「化け物」と後ろから指を刺されることも、石を投げられることもないし⋯むしろ周りの人達はこれでもかというほど親切にしてくれる、夢みたいな光景)


でも、魔女の前世でも親切にしてくれた人が居た

名前は、シル⋯⋯シルヴァン・クレール

本当に、本当にお優しい方だった

最後の瞬間もずっと私を抱きしめてくれた。

私はシルのことを心の底から愛していたし

多分シルだって私を愛していた、

身分の問題があって婚約は叶わなかったけどね…


(私が死んだ後も元気に過ごせてたらいいけど…)


「おーい!何してんだ!早く手伝ってくれ!」


「あっ!はーい!」


(いけない…考え事をしすぎちゃった)


慌てて私はおじさんの方へ駆け出した。

その拍子に、腕の中のさつまいもが何個か

ぼとっと落ちる。拾おうと身を屈めたが

手が塞がっていて拾えそうもない、

どうしたものかとあたふたとしていると_


「大丈夫ですか?」


と不意に男らしい声が前から聞こえてきた

顔を上げると、そこには黒髪で綺麗な顔立ちの

男性が立っていた。

腰には剣を刺して、白と青の騎士服を纏っている。


そしてサファイヤのように輝く男性の青い瞳はどこか懐かしさを感じた_


(騎士様がこんな辺鄙な村に来るなんて珍しい⋯)


あまりにも珍しい事で思わず見蕩れていると、

騎士の男性は屈んで、さつまいもを黙々と拾い始めた…その不思議な光景に私は、ポカーンと固まっていた。


全て拾い終えると、男性はさっと再び立ち上がり、

柔らかい笑顔を見せながら

「置く場所までお手伝いしますよ」

と何の躊躇いもなく言った。


その言動に親切だな〜と思わず感心してしまったが、私は慌てて首を振り


「いえいえ!もう十分です!助けて頂いて、

ありがとうございました!」

「後の事は私がやりますので、その拾っていただいた物を私の腕の中へ戻してください!」


とその提案を断った⋯⋯⋯が


「こんなに素敵な女性に持たせるなんて、

僕の騎士としての面目が立たないですよ、

だから 僕の方こそお願いしますっ、ね?」


次々に男性は言葉を並べ、何としてでも

私に承諾させるという圧をそれとなく感じた。


「じゃあ、お願いします⋯」


「はいっ」


私が渋々折れると、男性は満足そうに笑って村の方へと歩き出した。

その後ろ姿には心なしか、犬の耳としっぽが見えた気がした


おじさんの元へ向かう道中、今か今かと声を掛けるタイミングを見計らう_


「っ…!あの⋯優秀な騎士様とお見受けしますが、

お名前を聞いても?」


数分立ってようやく声を掛けられた…

私が声を掛けたかった理由はこれだ。

まだ名前を聞けていなかったのだ

ずっと、騎士様騎士様と呼ぶ事が私の中でモヤモヤとしていた。


「あぁ、失礼しました」

「僕の名前はセシルです、セシル・カスティエル。

どうぞ、シルとお呼びください。 」


私の胸が、ドクンと大きく鳴る


「シル⋯⋯、」


なんという偶然なのだろうか…

まさか前世で私の愛した人と同じ愛称だなんて、

よくよく騎士さ⋯セシルさんを見ると、どことなくシルを感じさせる雰囲気を纏っていた


(いやいやいや、そんなわけないでしょ!愛称が同じだからって意識しすぎよ、シルなんて何処にでもある平凡な呼び方なんだから。)


(それに、別の男性とシルを重ねるなんて

シルに失礼な行いよ…)


「あの⋯」


「ひゃい!!!!」

「ぁ、すみません…」


考え込んでいたところに突然、声を掛けてくるものだからビックリして情けない声で叫んでしまった

恥ずかしくて堪らない⋯きっと今、私の顔はりんごと同じくらい赤く染まっているんだろう


「すみません、考え込んでいるようでしたから何かあったのかと⋯」


眉を下げ心配そうにセシルさんは私を見つめた


「ぃっ、いいえ!私の方こそすみません」

「懐かしい知り合いにセシル様と同じ愛称の方がいたので思い返していました…」


「そうなのですね、ぜひどんな方か知りたいです」


「⋯⋯」


少し考えたあと、私はこう回答した


「シルは⋯情に厚い優しい青年でした」


シルを説明するというなら、

これ以外の言葉が見つからなかった

それくらい本当に優しい人だった。


「今、その方とは連絡はとれているんですか?」


「いいえ、本当に古い知り合いですので今はもう

どこに居るのかも分かりません」


「そうですか⋯」


1000年も前のことだから、とっくに寿命が尽きて

あの世に留まっているか

それとも私のように輪廻転生をしているのかな⋯

もしそうなら、また巡り会いたい


「そういえば、貴方のお名前もお聞きしていいですか?」


「あっ、私は聞いたのに名乗らないなんて

大変失礼しました⋯!」

「エステラ・ローウェルと申します

どうぞお好きな呼び方で、」


「では、エステラさんと…」


日常で、さん付けで呼ばれることなんて

少ない事だから何だかむず痒い


「そういえばセシルさんは、何処の騎士団に入っておられるのですか?」


「シルでいいですよ、僕は王立騎士団所属です。」


「王っ⋯?!!」


その言葉に驚きが隠せない


(まさか王立騎士団の方だったなんて!?

私、失礼な行動を何回もしてしまっているけれど

大丈夫かしら!?不敬罪で投獄とか⋯⋯)


王立騎士団とは、簡単に言うと数ある騎士団の中でトップの集団である。王自身から膨大な支援を受け、伯爵、中には侯爵に価する地位を持っている者もいる、それこそ騎士団長や副団長などの役職の者だ。


「あの、私⋯⋯何度か失礼を犯してしまっていると思うのですが、投獄とか⋯⋯??」


「ふはっ⋯大丈夫ですよ」

「僕は平民あがりですし、誰かに敬意を示されるような価値のある人間でもありませんから」


笑顔でこんなことを言う人が他にどこに居るというのか、その発言を私は失礼と見なされてもいいから否定したい。

それは考えるよりも先に、口にも出ていたみたい


「そんなっ、自分を卑下しないでください」

「セシルさ っ⋯⋯シルは素敵な方です!」


紛れもない本心と目を見て言える

私の言葉を聞いたシルは一瞬、目を見開いて

そして直ぐに微笑んだ、その表情は

あまりにも優しくて、暖かくて…

私の目頭がじーんと熱くなるのを感じた。


「エステラさん⋯ありがとうございます」



初めまして!らぴねす神と言います♩

最後までご覧頂きありがとうございました!初投稿のため、まだまだな部分がありますがぜひ暖かく応援して頂けたらはぴねすです♩

感想もばしばしお待ちしてまーす!


容姿情報

エステラの容姿は、茶髪にピンクの瞳の小柄な女性です♩エステラの前世であるアイリスは黒髪にピンクの瞳の女性でした⋯!そして、シルヴァンは銀髪に青目の容姿です!


それでは次は第2章でお会いしましょう!

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