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婚約者にすっぽかされていた妹のために、過保護な姉が怒鳴り込みました  作者: 紡里
第二章 婚約者選び

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9/18

試合開始

 演習場では、出場者が順番に箱に手を入れ、玉を取りだしていく。

 赤、青、黄色の玉で組み分けをするのだ。


 最初に赤い玉を取った十人が、舞台に上がった。

 舞台といっても、地面に円を引いただけの即席のものだ。そこから出れば、その時点で失格になる。


 開始の合図と同時に、空気が戦いの場に変わった。


 東の辺境伯の子息は、迷いなく槍を構える。

 示し合わせた訳ではないが、似た武器を持つ者同士が自然と向かいあっていた。

 剣には剣、槍には槍――といったように。


 だが紳士的に始まった勝負は、きれいな「試合」では終わらなかった。


 別の対戦で吹き飛ばされた男が、横合いからぶつかってくる。

 避けきれず、優勢だった選手が巻き込まれた。


「あっ!」

「そんな……」

 観客から声が漏れる。


 勢い余って、二人はまとめて円の外に転がり出た。

 審判が駆け寄り、旗を上げて失格を告げた。


 観客席からどよめきが上がる。


 ぶつかられた男は、呆然とその場に座り込んでいた。

 勝ちを確信していたのだろう。


「今のは、無効じゃないか? 横からぶつかられたんだ」

 審判を見上げて問いかける。


「一対一の試合ではありません。横も背後も注意が必要なのです。

 お気の毒ですが、それもまた運だと諦めてください」



 選手が五人まで減り、赤の組の試合が終了した。


 勝ち残った東の辺境伯子息が、がっくりと座り込んでいた男に手を差し出した。

「乱戦は恐ろしい。勝敗が一気にひっくり返される」


「はは、勉強になりました」

 手を借りて立ち上がると、照れたように笑った。


「これを提案したご令嬢は、なかなか食えないお方だ」

 辺境伯子息は好奇心を隠さずに、観客席のカタリーナを見上げた。


「僕の手には負えないかな。試合に負けたし、求婚するのはやめます」


 立ち去る背中を見て、「これも計算のうちなのか……?」と辺境伯子息は呟いた。



 次に青の組の試合だ。

 今度は最初から一対一ではなく、周囲を警戒した形で始まった。

 背後を取られないよう、円の外縁に立つ者もいる。


 そこに勢いよく上段から打ち込んでいく選手がいた。

 そのまま二人で転がりかねないと、観客は手に汗を握る。

 ガツンと打ち合うかと思われた。

 ところが、次の瞬間。

 片手を放し、木剣の中程を握り直す。

 切っ先を自分の側へ倒し、そのまま柄で相手の胸を押した。


 押された方は、体勢を大きく崩す。上から振り下ろされる剣を受けようと、待ち構えていたのだ。

 よろけて円の外へと踏み出してしまった。


 真剣ではできない動きだ。

 観客がわっと沸いた。



 だが、すべてが洗練された戦いというわけではない。

 一人に数人で打ちかかる場面があった。

 一人が足を狙い、別の一人が背後から打ち込む。

 逃げ場を失った男は、なすすべもなく打たれるだけ。

 さすがに危険と判断し、審判が割って入り助け出した。



 カタリーナは眉をひそめる。

「実戦的でも、品のない戦い方は好きではないわ」


「わたくしには、いい戦い方とよくない戦い方の区別がつきませんわ」

 令嬢が困ったように頬に手を当てた。


「あら、大丈夫ですわよ。騎士団のスカウトではないのです。

 強さではなく、好ましい殿方をご覧になればいいのよ」

 カタリーナは令嬢を励ました。


 中には震えて、視線を逸らしたままの令嬢もいる。

「お辛いようでしたら、係の者に救護室まで案内させますわよ?」

 カタリーナが声をかける。


「が、頑張りましゅ」

 噛み噛みの返事に、周囲の空気が和んだ。




 騎士団長は「この乱戦はいいな。訓練に取り入れたい」と髭に手をやった。


「攻撃に威力があっても、背後への警戒が薄ければやられる。

 防御の重要性を口で言っても伝わらない――。

 戦場に立ったことのない若者には、効果的でしょうね」

 年配の部下も嬉しそうだ。

「お、ご子息も健闘されてますな」


「これくらいは勝ち抜いてもらわないと困る」

 厳しい言葉だが、部下には、ほんの少し自慢げな口調に聞こえた。


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― 新着の感想 ―
益々、軍事系貴族の義妹への評価が上がる訳だが。 大丈夫だ、今回駄目でもそちら側と結託して王命貰い小姑を追い出すんだ婿殿。
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