舞闘会、当日
晴天。
協力を名乗り出た演奏家がいて、オープニングを飾ってくれるそうだ。
審判は騎士団から有志が買って出てくれた。
王子たちは目立たないよう、建物の中から観戦してもらうことになっている。
年頃の王子だけかと思ったら、幼い王子や王女も見たいと言い出した。
そのあたりは、騎士団長と近衛騎士に対応してもらう。
一応主催者になっている私は、胃がキリキリしていた。
なぜ、こんな大ごとになっているのだ?
演習場ではこちらが用意した木の武器を、参加者たちが手に取っていく。
ヴォルフがその脇で、要望を聞きながら長さや太さを削って調節している。
武器を振るう人たちの顔が、ぱあっと明るくなる。いい感じに仕上がったのだろう。
参加条件を、「カタリーナに指名された場合、正式に縁談を受ける意思があること」とした。
参加者は約三十名。
まず三チームに分けてふるいにかける。そこからはトーナメント戦だ。
自信がありそうな青年の中に、師匠が混じっている。
観客席では「あれは誰?」「きっと審判でしょう」などと、ひそひそ話が交わされている。
カタリーナと十数名の令嬢が、試合をよく見ることができる場所に座っている。
彼女たちは結婚相手を探しているのだ。
選手の名前を書いた一覧表を渡している。そこに嫁が欲しいのか、婿に入りたいのかも記載した。
カタリーナ以外の令嬢は、その紙と背番号を見比べて、真剣に吟味しようとしている。
カタリーナは肩書きに興味はないらしく、選手の動きを目で追っていた。
選ぶのは強い男ではなく、結婚したい人だからな?
働き者のゲルトルートは、裏方として王子に提供する飲み物や救護班の手配をしてくれている。
今日のドレスは膨らんでいないスカートに、露出の少ない清楚なものだ。シンプルなドレスだから、婚約指輪が一層映える。
「戦いを見慣れていないご令嬢が気を失うかもしれないから、注意して見回ってちょうだい。
倒れた人がいたら、扇の青い面を掲げて。危険人物がいたら、赤い面よ」
ゲルトルートは、飲み物を売るアルバイトに説明をしていた。
本日はアルコールの販売はなしだ。ご令嬢のための大会だから、ご令嬢の安全が最優先される。
「あの師匠が義弟になったら嫌だなぁ」
和ませようとゲルトルートに冗談を言ったが、笑ってくれなかった。
「そうなのよねぇ。わたくしは可愛い義弟が欲しかったのだけれど」
と、ため息を吐く。
実現したら、本当に嫌だぞ。
いい年のおじさんが若い娘に……という忌避感とは別に、師匠と結婚したら、カタリーナは家を出て行きそうにない。
たまに里帰りするくらいならいいが、何をしでかすかわからない人間が増えるだけ――。
入り婿の権限は弱いけれど、歴とした関係者だ。そうなったら、徹底的に反対する。
――と言いつつ、最近はあの姉妹の掛け合いに慣れて、以前ほど癇に障ることもなくなってきた。
貴族らしからぬ、ざっくばらんな空気が心地よく、からかわれても笑っていられる。
いずれ当主夫妻になったときに――と肩肘を張って、先回りして不安になっていただけかもしれない。
年上をおちょくる小悪魔に、大人げなく振り回されてしまったな。
姉を取られるのが嫌だったのだと思えば……まあ、気持ちはわからなくもない。ゲルトルートは魅力的だから。
楽器のプワー、プオーといった練習の音が聞こえ、ざわめきが消えた。
指揮者が腕を上げ、勇ましい演奏が始まる。
「リンデン殿、挨拶を頼みます」
と司会進行の騎士に声をかけられた。




