舞闘会の出場者
「お嬢、俺も来たからね」
師匠の後ろから、青年が手を振った。
「ヴォルフ兄さんまで。何しに来たの?」
師匠の息子で、カタリーナの兄弟子にあたる。
「木製の武器を使うんだろう。その場で使い手に合うよう、調節してやるよ」
ヴォルフは背負っていた道具入れを見せた。
大会のことをそっちのけで、カタリーナたちは武器の話を始めてしまう。
「ちょっと待て。参加希望が二十通も来たぞ」
私は額に手を当て、呻いてしまった。
求婚してきた人数の倍以上に膨れ上がったのだ。
「いいえ! この方は既婚者です」
頼もしい婚約者ゲルトルートが、気づいて教えてくれた。憎い敵を見つけたかのように、目を吊り上げている。
そんな感情の豊かなゲルトルートを眺めていたいが、ここは落ち着かせなければ。
「どこかで、ただの武芸大会と勘違いされているのかもしれませんね。
取り急ぎ、既婚者と未婚者に仕分けしましょう」
そうして二人で、参加希望者を分けていく。
頭を寄せ合っての共同作業だ。ゲルトルートの顔が近くて、時々手が触れあう。余計な仕事の中にもご褒美があるなぁと、頬が緩む。
「わしも参加するぞ」
カタリーナたちの輪の中から、師匠が抜けて出てきた。
「なんで? わたくしに求婚するつもりなの?」
カタリーナが目を丸くして、師匠の背中に問いかけた。
「んなわけあるか。わしは死んだ母ちゃん一筋だ。
都会の若僧どもにカツを入れてやろうかの」
腕を曲げ、力こぶを見せつける。
「そういうのは、騎士団とか兵士長の仕事なので、大人しく観戦していてください」
私は、まっとうな大人の意見を口にした。
「それなら、わたくしが参加してもいいわよね?
わたくしも独身だわ」
可憐な声で自己主張するのは……もちろんカタリーナだ。
状況を理解していない脳天気さに、額に青筋が出てしまう。
「何を言っているの。あなたが釣書に興味を示さないから、苦肉の策なのよ。
我が家の財政的に、これ以上の規模にするのは無理なの」
ゲルトルートがお姉さんぶってたしなめる。
ぷんぷんという文字が背景に浮かびそうな、可愛い怒り方だ。
「それなら、一般公開にして参加費と観覧料を取ったらどう?
見世物にしてしまうのよ。
そこで集まったお金で大きな会場を借りて、運営すればいいわ」
カタリーナが両手をパンと打ち合わせて、目を輝かせた。
「参加費を後出しで徴収するというのは、どうかと思うよ。
これから一生のお付き合いになるかもしれないのに、心証が悪くなる」
私が良識に則って、説明した。
カタリーナは暴走した牛のようだ。何をしでかすか、わかったものじゃない。
「なら、参加費はなし。
で、婚約者募集中の令嬢をたくさんお招きするのはどう?
公開の合同お見合いよ」
「カティ。あなた、どさくさに紛れて婚約者捜しをサボる気じゃないでしょうね?」
「え、いやぁ、そんなことは……お姉様の考えすぎでしてよ?」
「カティ! しっかりなさい! 自分の将来のことなのよ」
相変わらず仲がいい姉妹のイチャイチャを見せつけられた。……嫉妬する私がおかしいのだろうか。
この後、騎士団長が――頼んでもいないのに、騎士団の公開演習場を使えるよう掛け合ってくれた。
それをどこからか聞きつけた王子たちも、観戦したいと言い出したらしい。
……カオス。




