可愛い妹
妹が婚約者にすっぽかされているらしい。
どうやら病弱な幼なじみがいるとか。
異性の幼なじみが駆けつけなければいけないとは、どんな状況なのだろう?
使用人はいないのだろうか? 医師でもない素人が駆けつけて、役に立つのだろうか?
まったくもって不可解である。
妹は、約束のお茶の時間、ずっと大人しく待機しているとか――。
余計なことを言わないようにとは言ったが、主張すべきことは主張しないといけない。
このままでは、我が家が馬鹿にされているのと同じだ。
黙っていたら、婚約者のアホを増長させる。
なんとかしなくては――。
まず、妹にすっぽかされた日にちと、婚約者の言い訳を書き出させた。
妹は日記を付けているので、それほど難しくはなかった。
ひどい。
奴の家でのお茶会は、ほぼ来ない。
カフェでも、公園の待ち合わせでも……。
最初のうちは言い訳を伝えに来たが、最近はそれもない日がある。
人として、どうなのだ?
思わず、妹の侍女を叱りつけてしまった。
「あなた、なぜこんなことを黙っていたの?」
婚約者の家にもカフェにも同行しているのだから、報告すべきではないだろうか。
「申し訳ございません!」
侍女は真っ青になって頭を下げた。この侍女は男爵家の三女だ。下手な理由で解雇されたら、人生が終わってしまう。
「彼女は悪くないの。わたくしが黙っていてと頼んだから――」
妹は必死になって、侍女を庇う。
「ええ、そうね。あなたが悪いわ」
妹はそう言われると思っていなかったようで、ショックを受けた顔をした。
「あなたがしっかり対処しなかったから、彼女はわたくしに怒られた。
これがお父様に知られたら、彼女は解雇されるかもしれないのよ」
甘やかさずに、現実を突きつける。
「そ、そんな……いやよ。彼女はよく働いてくれるの」
「一番悪いのは、もちろん婚約者よ。
でも、あなたがすぐに相談していたら、彼女の立場が悪くなることなんかなかった。
つまり、事態を悪化させたのはあなたの判断ミス。
自分が我慢すればいいなんて、考えたらいけないわ」
最後は優しく言い聞かせる。
「お姉様……」
妹は涙ぐんだ。
「結婚して女主人になるなら、受け身では駄目よ」
「はい」
「では、お父様にお話があると伝えに行ってくれる?」
妹の侍女に声をかけた。
自分の侍女に頼むべきかと思ったが、クビにすると恐怖を与えてしまった。廊下を歩きながら、気持ちを落ち着かせてもらおうという配慮だ。
「あなたが反省するなら、彼女を解雇する必要はないと口添えしてあげるから」
妹の侍女にも聞こえるように、はっきりと言う。
「お姉様~」
妹の頭を撫でながら、あの舐めた真似をした婚約者をどうするかを考えていた。




