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5 カチコミじゃぁ!覚悟せいやこのパクリ野郎!!!

「ああ、勇者典太よ。私はガネーシャ。この世界の神。」


典太は、何もない白い部屋に立っている。

目の前にはガネーシャが…何回目の展開だよこれ。


「其方は違法薬物でラリってしまった。

さあ、異世界 インド共和国に転」

「おいコラ今何つったァ!」

ガネーシャに殴りかかったところで目が覚めた。


とんでもない物を飲まされた。犯罪者になっちゃう。

俺はトイレで尻を拭き、風呂場で汚れたパンツを洗っている。

猛烈な目の痛みに括約筋がモゾモゾしていたところにあの馬鹿に麻薬を盛られ、俺の意識はトんだ。

ついでにコップが不衛生を極めており、腸内環境もトんだ。

そして最後に辛うじて決壊に抵抗していた括約筋もこれには耐えられずトんだ。

その結果俺の人間の尊厳がトんだ。

…あいつを殴り殺すのは、まずは人間の尊厳を取り戻してからだ。


***

よし、あの野郎油断してやがる。もう我慢ならん。

俺はビール瓶を片手に奴の後ろに忍び寄る。

ガネーシャはダイニングの椅子に腰かけ、フードデリバリーのZOMATOで勝手に頼んだカレーをムシャムシャと食べている。

脳天をカチ割ってやろうとビール瓶を振り上げたところで…典太はそれを見た。


「うぉらぁああああっ!!!」

グシャっ!

典太の振り下ろしたビール瓶が叩き潰したパラック・パニールの容器にはこう書いてあった。

『Century 22 Food Corp Pvt. Ltd.』


「…まったく典太君。いきなりどうしたんだい?」

飛び散ったパラック・パニールの飛沫を浴びて顔面がところどころ緑色になったガネーシャが、顔をその辺に脱いであった典太のシャツで拭きながら訊ねる。

「うるせえ!こいつら…こいつらのせいで俺は…!!!」


典太の会社、センチュリー22商事は、ROCから商号申請を却下された。

ガネーシャの説明により、それは『類似の商号が既に存在している』為であると理解できたが、典太は当初却下の理由も商号申請の仕組みも理解していなかったので説明できず、Web会議で対峙した本社取締役陣にガン詰めされた。

「無能!」「ガキの使いか!」「境界知能!」「インポ野郎!」

ありとあらゆる罵詈雑言が典太に向けて飛んできた。

取締役の怒声に金玉の縮み上がってしまった典太は一言も返すことが出来ず、ただ口を半開きにしてアウアウ言いながら涙を流すことしかできなかったのであった。


「こン糞外道のせいで俺は…俺は!!!」

典太の怒りは凄まじかった。目は血走り、股間が盛り上がっている。

「許さねぇっ!!こいつらブッ潰す!!!おい、ガネーシャ、アレを出せ!」

「典太君、アレじゃわからないよ。」

「馬鹿野郎!飲食店にカチコミかけんならアレに決まってんだろうが!

…バキュームカー出せやコラぁ!満載で頼むぜ満載でなァ!!!」


俺はガネーシャの召喚したバキュームカーに乗り込み、秩序の欠片もなく混雑した道を、センチュリー22フードの運営するレストラン目指して運転している。

…あの馬鹿野郎、最初俺の部屋でバキュームカーを召喚しやがった。おかげで部屋の中は大惨事だ。

願い事をもう一つ消費し、バキュームカーを外に出したので、2回分目が痛い。

「…ねえ典太君。さっきだいぶキマってたし、まだラリってるでしょ?」

「うるせえ!誰のせいだと思ってやがる!」

さっきから隣に座ったガネーシャがうるさい。ビビってんのかこの野郎。


それにしてもこの国の道路交通は、カオスそのものだ。名古屋人も裸足で逃げ出す。

交通法規へのリスペクト・譲り合いの心・十分な台数の信号機。そのすべてが存在せず、ドライバーそれぞれが5秒に一回クラクションを鳴らしながら移動の自由を行使している。

皆、研ぎ澄まされた反射神経を以てすんでのところで危機を回避しているが、多少の接触は日常茶飯事で、事故にはカウントしない。


「うおらぁああっ!轢き殺すぞ腐れ外道がァ!!」

俺はホーンボタンを押しっぱなしで、急ハンドルでノーヘルパパママ&ガキ二人が乗った4ケツスクーターを避ける。

「おっ、こっち空いてんなァ!」

3車線の道は既に4車線になっているが、第5の車線が見えたのでそこに滑り込む。

止まったら負けだ。


「…典太君、君の作戦、控えめに言って救いようが無いよ。この叡智の神がもうちょっとマシな作戦考えてあげようか?」

「黙れ三下!俺はこの会社の取締役だぞコラ!これはわが社の正式な方針だ!異論は認めん!」

この会社の危機を救えるのは取締役であるこの俺だけだ。


作戦はこうだ。

俺の会社、センチュリー22商事インディアの商号申請が通らない理由はただ一つ。

この『Century 22 Food Corp Pvt. Ltd.』の存在だ。

こいつがあるおかげで、登記局に『類似商号が既に存在している』と判断され、申請が却下された。

なので俺はこのセンチュリー22の劣化コピークソダサチンカスレストランを叩き潰す。

衛生問題はこの手の飲食店には致命的だ。

なのでバキュームカーで突撃し、店内にタンク内の大便を放出。奴らをウンコカレー専門店に業態転換させてやる。

そうすればほどなく奴らは倒産。

類似商号がなくなるので、『センチュリー22コープ・インディア・プライベート・リミテッド』は晴れて登記局の承認を受けることが出来る。


「な、一点の隙も無い完璧な計画だ。」

「…もう一回『トリシューラ』を出して今度は脳改造でもしてあげた方がいいかなぁ。」


そうこうしているうちに、俺達は『Century 22 Food Corp Pvt. Ltd.』にたどり着く。

週末ということもあり、店内はかなり繁盛しているようだ。

「…ねえ典太君。今ならまだ引き返せるよ。特別に願い事カウンター一回分戻してあげるよ?」

「超要らねえ!漢ってモンを見せてやるから黙ってろ!…おし、やるぞ。」


アクセルを踏み込み、クラッチを一気に繋いで急発進をかける。

店の前に止まっているバイク数台を弾き飛ばし、ドアをブチ破ってダイナミック入店を果たす。

バキュームカーから降りると、店員も客も呆けたような顔であんぐり口を開けて俺を見ている。


「ご注文はお決まりですか~?…はぁい、ウンコカレーですね。

…オラぁッ!喰らいやがれこの腐れ外道共ッ!!!」


俺はバキュームカーのバルブを操作し、タンクの内容物を店内に放出した。


今回の願い事 2回

残りの願い事 995回

怒り──

それは煩悩のなかでもとりわけ、火に近いものにございます。

燃えれば熱し、熱すれば灼き、灼けば焼かれ、己も他も焼け焦げる。

それが怒りにございます。

怒りとは、仏典で言うところの「三毒」のひとつ。

貪・瞋・痴 (どん・しん・ち)──その「瞋」が怒りというものにございます。

されど──拙僧はそれを否定いたしませぬ。

怒りを否定すること。これ即ち魂の振動そのものを否定することにあり。

親鸞聖人もこう仰いました。

「善人なをもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」

つまり、怒っていい。煩悩まみれでよい。

南無阿弥陀仏の呼びかけを以て阿弥陀如来の御慈悲に縋るものは、それが何人であっても救いの手が差し伸べられる。


御仏とは、綺麗な言葉にだけ耳を傾ける者にあらず。

怒りの言葉にも、泣き言にも──

ただ、その中に「真」があれば、救いはござります。――合掌。

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