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10 ウッソだろオイ!仕事せぇ糞コンサル!!!

「ああ、勇者典太よ、其方は業を重ね神の裁きを受け、死んでしまわれま」

「うっせえ!お前が殺したんだろうが!」


…ウンザリする。何度目の展開か忘れたが俺はまたこの白い部屋に立っている。

サッサと生き返らせやがれ。


「このまま畜生界に転生させてもいいんだよ?」

「うそですうそですガネーシャ様どうかお助けくださいお願いします」


***

ようやっとうちに帰ってきた。

本当に、生きた心地がしなかった。っていうか死んだ。

「あ、おかえり典太くん。…聖典太様って呼んであげようか?」

…意味不明だ。俺は無視して、バラナシで着ていたボロを脱ぎ捨て、ゴミ箱に叩き込もうとする。

身ぐるみ剥がされたあと、隠すモンを隠すため道端で拾ったものだが、ケツでも拭いたかのように汚い布だった。


その布にガネーシャに頭を潰された際に飛び散った血と脳漿が新しくこびりついているのを見つける。

俺は改めて頭をさする。

…ほんとに生きてるんだよな、俺?


「あー、典太君?仕事のことは覚えているかい?」

「ああ、悪いな。あの時のフラグは出発前に既にへし折ってあるからな。もう終わってるだろ。」

商号申請を完了したセンチュリー22の次のアクションは『設立申請』だ。

これは必要書類を当局のポータルからアップロードすれば完了だ。

旅行に出る前にコンサルにすぐやるよう念押ししてある。余裕だ。


「君は本当に教科書通りにフラグ回収してくるねえ。わざとでしょ?」

へ?…ふぇ?

「まだ、申請アップロードすらされていないよ?」

俺は小便を漏らしながらゲロを吐いてその場にぶっ倒れた。


***

「ああ、勇者典

「一話に二回もやらんでよろしい。」


***

「あ、おかえり典太君。」

…俺は小便とゲロの沼で目を覚ました。いや、目を覚ましたくない。永眠したい。

ウッソだろ?あれだけ苦労して取ったセンチュリー22の商号が…。

…いや、まだあきらめるのは早い。


商号の有効期限は20日。俺が旅行準備していたのは3日。旅行に行っていたのは4日…のはずが1週間。

有効期限はまだ10日ある。まだ慌てるときじゃない。


よし、まずは電話だ。

俺はガネーシャに、バラナシでラジャ一味に恐喝されたスマホ他、カードやパスポートやカバン等一式諸々取り返してくれるよう願いをかけた。


…その後の目の痛みにのたうち回っていたら、外から窓を大ナタで叩き割って、腕が4本ある、三つ目の青い肌の女がゲタゲタ笑いながら入ってきた。

表情は完全にイっている。口を大きく開けて舌を顎まで垂らしている。

4本の腕のうち右腕には大ナタを、左腕には誰かの生首をひっつかんでおり、そのどちらからも血がボタボタと床に滴り落ちている。第二の左腕には生首の血を受ける皿が持たれているが、思いっきり血が零れ落ちており意味がない。


そして首の周りには血の滴る生首を繋いで作ったネックレスを、腰回りには切り落とされた誰かの手首を数珠つなぎにして作ったスカートを履いている。

そいつはテーブルの上に、生首の血を受けていた皿の中身をぶちまけると、ガネーシャと二言三言話して去っていった。…俺が盗られたスマホ等が、テーブルの上にできた血の海に浮かんでいる。

「ばいばーい、ありがとカーリー母さま。またねー。」

俺は暫く血まみれになった部屋の中を見つめて戦慄していた。


「…俺には3人の母がいた。一人はパールヴァティー母さま。その第二形態のドゥルガー母さま。そして最終形態のカーリー母さま。…ラジャって人、運がなかったね。あのカーリー母さまに詰められるなんて、同情するよ…。」

ガネーシャはなにやら独り言を言っているが聞きたくない。

…この血、ラジャの野郎のじゃねえよな…。


テーブルの上に置かれた荷物類は血にまみれている。

俺はそこからスマホを取り出し、キッチンで洗う。

そしてコンサルに電話をかけたんだが…


「ガネーシャ様…ちょっと代わってもらっていいっすか?」

いつもならマヘシュに代われというと日本語の話せるマヘシュが出る。

しかし今はずっと英語だ。ヒンディー語かもしれんが、いずれにせよ俺にはわからない。

俺から受け取ったスマホで話していたガネーシャは、通話を終えてスマホをテーブルに置く。

『カシャコン』

…覚悟はしていたがこの程度でもカウンター減るのね。俺は目を押さえてしばらく悶絶する。


「あー、典太くん」

ガネーシャは言う。

「マヘシュ、辞めちゃったみたいよ?」

「…へ??」


話はこうだ。

センチュリー22がインド現法設立を依頼しているコンサル、フラウドギブマネーの担当者、マヘシュ。

奴はこのコンサルで唯一日本語ができる人材だ。俺はいつもこいつと話をしている。

そんなマヘシュだが、10日程前に突然「神の啓示を受けた」とか言い出したらしい。

…ん?


何でも仕事に行き詰っていたところ突如ガネーシャが降臨し、奇跡を起こして問題を解決したと。

……うんん??…アレだな。心当たりがありすぎる。


それにより信仰を新たにした奴は残りの人生をガネーシャに捧げると言い出し、サドゥー(修行者)に転身。

自らの死亡届を提出し、徒歩でバラナシに向かったとのことだった。

………ハァ??


――サドゥーに転身した者は、法的には「死亡した」ものと見做される。

彼は、その法的な命をガネーシャに捧げ、生物的な命が尽きるまでの時間を、ガネーシャへの信仰に捧げるのだ。

「ハァああああ?ふざけんな!仕事やり切ってからにしろやあの野郎!!」


そういえばバラナシ旅行前にマヘシュに設立申請を念押しした際、どことなく上の空だった気がする。

…いかん。とにかく誰でもいいからコンサルと話さねば。

「ガネーシャ、コンサルと話をしなきゃならん。すぐ英語喋れるようになるものなんか出してくれ。」


「そうだなあ…ああ、あれを出そう。ガンジープリズムパワー・メークウィッシュ!」

ガネーシャの手に、橙色のゼリーのようなものが出現する。

「これはね、げだつ道具の『翻訳アマーワト』っていうんだ。この国には数百の言語があるからね。これを食べると、別な言語を話す相手とも、言葉が通じるようになるよ。」

「サンキュー、ガネーシャ!」


俺はガネーシャの手からそのゼリーもどきをひったくり、一口に食べる。

…ぐぎゅるるる

一瞬で腹が痛み出した。…やばい、出る。

俺がトイレに駆け出したところで

『カシャコン』

俺はその場に倒れ、目を押さえて悶絶する。

…そして尻からたった今食べた『翻訳アマーワト』その他諸々が噴出した。


***

「馬鹿野郎!使い物にならねえじゃねえか!!」


――話は5分前に遡る。

俺はクソの始末もそこそこに、コンサルに電話をかけた。

代償は大きかったが、今の俺は数百リンガルだ。

「あー、もしもし?センチュリー22の乃木です。」

「…ジィ?ハロー?」

…通じてる気配がない。

その後、10ターン程お互いハローハロー言い合った後、俺は電話を切った。


「うーん、『翻訳アマーワト』はお腹の中に無いと効き目がないからねぇ。」

ド阿呆!それなら腹壊すようなモンじゃ意味ねえだろうが!

「うん、わかった。そうだな、アレを出そう。ガンジープリズムパワー・メークウィッシュ!」

すると目の前に、大きなドアのようなものが現れた。

…デカすぎて天井にめり込み、天井にヒビが入っている。


「これはね、げだつ道具の『どこでもゴープラム』っていうんだ。これはね、『アートマンとサンサーラの部屋』につながっているよ。

…その部屋ではね、時間の進み方がこの世界とは違うんだ。その部屋で1年過ごしても、この世界ではたったの1時間。

…さ、典太君。勉強しよ?」


目を押さえて悶絶している俺は首根っこを掴まれ、山のような参考書を持ったガネーシャに『どこでもゴープラム』の中にブチこまれた。


今回の願い事 4回

残りの願い事 985回

責任とは、我々がこの世に生を受けた瞬間から、常に身の内に宿っているものにございます。

それは重き荷のごとく、背に負うものと思われがちでございますが、実のところ、それは命の流れに寄り添う「響き」のようなものでございます。


誰かのために歩むとき、誰かの言葉に応えるとき、我々はこの響きを発し、また受け取って生きております。

つまり、責任とは苦しみではなく、命のやり取りそのものにございます。

人は誰しも、過ちを犯し、迷い、悩むものでございます。

そのとき責任を思い出すことは、己の罪を数えることではなく、その迷いを誰かの救いに変えようとする、静かな祈りでございます。


責任とは、罰を恐れて縮こまるものではございません。

それは、己の行いが誰かの中にどのように残り、響いていったかを見つめる、慈悲の心にございます。

気づいたときにはすでに遅くとも、悔いたときにはすでに苦しくとも――

その悔いを誰かの悲しみに寄せ、静かに受け止める者こそが、真に責任を果たす者と申せましょう。


責任を持つということは、言葉を持つことに似ております。

発すればこそ、誰かの胸に届く。

届いてこそ、次の想いが生まれる。

それが続いてこそ、この世に響きが宿り、人と人とがつながり合うのでございます。

どうか皆様――責任を怖れず、恥じず、誇らず、ただ静かに、次の響きを紡いでまいりましょう。

――合掌

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