初めての狩りが終わり
深夜、家に帰り着いた真魚は、そのままトイレに駆け込んだ。
靴も履いたままだった。
しゃがみこんで便器に顔を突っ込む。
すぐに激しい嘔吐が始まったが、何も出てこない。
”ふん、情けないねえ。まあ、初めてだから仕方ないけどさ。”
真魚の中の声の主が呆れた様に言う。
「冗談じゃないわ!
わ、私は・・、私は人を殺したのよ。
しかも・・しかも、その肉を食べ・・
まともでいられる訳ないじゃない!」
真魚は嗚咽を繰り返しながら、声に出して叫んだ。
「酷い、酷すぎるわ。
何で、何で私がこんな目に遭わなきゃならないの!」
”それがお前の仕事だからさ。新しいね。〝
「仕事!? 人を殺して食べる事が私の仕事だって言うの? あり得ないわ。私は人間よ。化け物じゃないのよ!!」
”あのねえ・・”
声の主は、真魚の感情の高ぶりなど意に介さないといった口調で答えた。
”お前達人間にとっては特殊なケースかもしれないけど、この地球上に住む生き物全体の基準からすれば、共食いなんてのはさして珍しい事じゃないんだよ。
特に、あたし達に寄生された生き物にとっては、それが当たり前の行動だからね。”
「”あたし達”?あたし達って・・あなたは一体誰なのよ!!」
精神的に疲労の極限に達し、また何度も嘔吐を繰り返した真魚は、急速にグッタリとなってトイレの床に座り込んだ。